資金洗浄を防止する『犯罪収益移転防止法』
『犯罪収益移転防止法』とは、資金洗浄(マネーロンダリング*1)を防止する為に作られた法律です。
もともと資金洗浄対策として『組織犯罪処罰法*2』と『本人確認法*3』によって規制されていましたが、2008年にこの2つの法律を統合する形で『犯罪収益移転防止法』がつくられました。
2008年の法改正
当初、『本人確認法』は金融機関のみが対象でしたが、その後、不動産や貴金属等を取り扱う「金融業者」、「司法書士」、「会計士」、「弁護士」なども規制対象となりました。
そして2008年。
これまでの『本人確認法』から正式に『犯罪収益移転防止法』へ変わる際に、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを利用する際にも本人確認が必要となりました。
この事により、本人確認を行わずにバーチャルオフィスやレンタルオフィスを貸す行為は犯罪となります。
*1資金洗浄(マネーロンダリング)
裏金、詐欺、脱税等の犯罪によって取得した収入を、金融機関を何度も通したり、株券や債券等に変える事で、資金の出所を不明確にし、一般社会で使用してもそこから逮捕されない為に行う方法。
犯罪によって汚れた金からその痕跡(汚れ)を消す事になぞらえ、資金”洗浄”と言われる。
資金洗浄は、その行為自体を『組織犯罪処罰法』により規制されている。
*2組織犯罪処罰法
暴力団等の反社会的団体や、一般の会社に偽装した犯罪組織を取り締まる法律。
*3本人確認法
金融機関が、犯罪組織の資金を取り扱う事が無いように本人確認を義務付け、不正利用が発覚した際には罰則を与える法律。
『犯罪収益移転防止法』がバーチャルオフィスに適応される理由
規制の理由は、バーチャルオフィスが犯罪に使われるケースが多い事に起因します。
警察庁の発表によれば、未公開株や公社債等を「絶対に儲かる」といって売りつける『利殖勧誘型犯罪』に利用されたとして、2011年に凍結された口座は949法人で計2746件。
そのうち、バーチャルオフィスを利用していたのは181法人。全体の19.1%に及んでいます。
この事から、『犯罪収益移転防止法』による本人確認が徹底していなかったのではないか、と警察庁はバーチャルオフィス業者に対してより厳しい取り締まりを行う事が考えられます。
日本経済新聞-「利殖犯罪」口座 名義人の2割が仮想オフィス悪用
『犯罪収益移転防止法』が起業家の足かせに
起業後進国と言われ続けていた日本も、2006年の新会社法の設立により、1円からでも起業する事が可能になりました。
これに追い風を与えていたのが、バーチャルオフィスの存在です。
商売を行う際には『特定商取引法の規定』、さらに商売上の信頼を得る面からも、住所等の連絡先を提示する事が必要になります。
しかし、資本の低い起業家にはオフィスを借りる事は出来ませんし、自宅の住所をネット上に載せる事は安全面から見ても抵抗を覚えるでしょう。
そういった要望の受け皿となっていたのがバーチャルオフィスでした。
バーチャルオフィスでの口座開設は困難
バーチャルオフィスとの契約には免許証や住民票、印鑑証明書等の身分証の他に、法人であれば登記簿謄本や代表者である事を確認できる材料があれば、問題はないでしょう。
そこで、問題となるのは、会社の口座を作る時です。
『犯罪収益移転防止法』により、バーチャルオフィスが規制対象にされて以降、銀行側はバーチャルオフィスの住所に対して口座を作る事に非常に慎重な態度を取るようになりました。
実績のない新規の起業家にとって口座作りが最も難しい問題かもしれません。
バーチャルオフィスを使用して起業する際には、その旨を銀行と話し、会社として信用してもらうか、もしくは銀行と信頼のあるバーチャルオフィスに紹介を頼む。
あるいは起業家をサポートする「シェアオフィス」や、「ドリームゲート」といった、起業支援プログラムの利用も視野に入れるべきかもしれません。
法改正により、バーチャルオフィスの信頼度が上がる可能性
数年前に比べ、バーチャルオフィスを利用しての起業は難しくなったかもしれません。
しかし、その事を逆に考えれば、『厳しい審査を通過した、信頼できる企業』ともとれます。
また、法改正があるにも関わらず、いまだに身分証なしで契約を進めるバーチャルオフィス業者に関しては、法律への認識が甘いのか、もしくは顧客を審査する余裕がない状況にあるのかもしれません。