心に大きな痛手を負わす病気
「少年の心を持った大人になりたい。」という人に時折接する事があると思います。
無邪気であったり、時として無鉄砲であったりと、ユーモアとドキドキ感がその場を包んでくれることがあるでしょう。
しかし、「子供の体形を持った大人になりたい。」という人に接することはありません。
子供として見られる事で、何かメリットを見いだせるかと言うと…あまり多くはないでしょう。
でも、世の中にはそう願っていなくても『子供のような体形』のまま、大人になっていく病気で悩む人達がいます。
そんな悲痛をもたらす病気は『類宦官症』と言います。
子供の頃、陰部に毛が生えてきた事で多少からかわれる事がありますが、いずれは大抵の人がそうなるので時が経つうちに無くなっていきます。
しかし、類宦官症になると、それとは逆の現象が生じてしまうのです。
その外見ゆえに、心無い言葉を浴びせられたり、からかわれたりする事があります。
少しでも大人の体になりたいという思いを常に抱えなくてはならないのです。
思春期の段階で発症する事が多いので、大きな痛手になってしまいます。
しかし、発症したからと言って、一生付き合っていかなくてはならないわけではありません。
適切な治療をするなら改善はできます。
類宦官症はどんな病気?
類宦官症とはどんな病気なのでしょうか?
この病気につけられた名前を紐解くと、どんな症状か理解する事ができます。
ここで使用されている『宦官』とは、『古代、男子禁制の後宮でお仕えする為に去勢を施された男性』の事を言います。性器がない状態の男性の事です。
と、言っても類宦官症は宦官の様に性器がなくなるというものではありません。
男性性器の成長に障害が生じ、成長しきれていない状態や毛が一向に生えない、もしくは薄い。
さらには、声変りせず子供の様な声の状態のまま、年齢を重ねてしまうという病気です。
冒頭でふれた『子供の様な体型をした大人』になってしまうのです。
他にも、知能の低下や色覚や嗅覚に異常をきたすこともあります。
どうしてこのような症状を引き起こすのでしょうか?
類宦官症は原因となっている2つの要素
類宦官症の原因となっている要因は2つ考えられます。
1つ目の要因
1つ目の要因は『男性ホルモンが生成されない』こと。
これはクラインフェルター症候群というものです。
人体には“X染色体”と“Y染色体”の2つが存在しています。
受精の際X染色体を2つ持った卵細胞とXとYの染色体を1つずつ持った精子が、互いに細胞分裂し結合する事でXXの女性とXYの男性になるのがセオリーです。
しかし、クラインフェルター症候群だと、受精の際の細胞分裂が正常に行かずXXYの細胞になってしまうのです。
この細胞を持った男性は精巣の発育に障害が生じてしまい、“性徴”ができない状態になってしまうのです。
2つ目の要因
2つ目の要因は『ホルモンが分泌されない』というものです。
本来人間は2次性徴に差し掛かると、下垂体という所から性腺刺激ホルモンが分泌されます。
しかし、精巣に機能障害などがあると、このホルモンが分泌されず発育が止まってしまいます。
それにより、『性欲の低下』『陰茎や精巣の未発達』『毛(ひげ含む)が生えないもしくは薄毛』『声変りが無い』『知能の低下』『色覚・嗅覚の異常』『骨端線が閉じないことでおきる妙に長い手足』という症状が見られます。
治療方法
この病気の治療方法は、“2次性徴”を促す目的で行われる投薬治療です。
特に男性ホルモンであるアンドロゲンや、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの注射を何度か繰り返していきます。
これが一般的で最善の治療法とされています。
ただし、自分で行なおうとせず医師の判断の基行なってください。
適切な治療で大人の体に近づけ心痛を捨てられる
類宦官症はその外見ゆえに大きな心痛を負わす事があります。
だとしても、決して治らない病気ではないので、一生心痛を負っていく事はないでしょう。
医学の進歩により、何が原因でどういう治療が効果的かはっきりしています。
ホルモン剤の投与による適切な治療を行なえば、大人の体に近づいていく事は可能です。
それにより、それ以上心痛を増やす事はなくなるでしょう。
類宦官症は治癒する病気なのです。