空気伝播音と固体伝播音
音とは『物質を振動させて伝わる波』の事です。
その中で隣人の話し声やテレビの音のように、空気を媒介にして伝わる音を『空気伝播音』。
壁や天井などの、物質を振動させて伝わってくる音を『固体伝播音』と呼びます。
原因の場所が特定しにくい固体伝播音
固体伝播音は空気伝播音に比べ、早く伝わるという特徴があり、また固体から固体へと伝わる為に音の聞こえる方向に原因があるとは限りません。
階下からの振動が床、壁を通ってあたかも隣の部屋から鳴っているように聞こえたり、遠く離れた音が配水管を伝わってくる事もあります。
また材質によっては振動を大きくし、まるでスピーカーのように音量を増幅する事もあります。
特に『ドスン』という重い物を落とした時に発生する『重量床衝撃音』を防ぐのは非常に難しく、防音設備のしっかりとしているマンションの価格が高いのは、この重量床衝撃音を軽減する為にかかっていると考える事も出来ます。
ウォーターハンマー
『水撃現象』とも呼ばれ、比較的よく見られる現象です。
キッチンや洗面所で流していた水を止めた時に、「ゴン」とか「ドン」という音を聞いた事はないでしょうか?
もしくは洗濯機の動作中にも同じような音が鳴る場合があります。
ウォーターハンマーの原因
主な原因は『水道管の内部の急激な圧力変化によって起きる衝撃波』によるもの。
物質に全て慣性の法則が働きます。この為、流れていた水を急に止めると、後ろ側にある水は止まりきれずに前の水を押しますが、前方の水には逃げ場が無い為に大きな圧力がかかります。
その大きな圧力は『過大圧力波』となって、周りの水道管にぶつけられ、そこの時に大きな「ゴン」という音を発生させます。
ウォーターハンマーの騒音は拡散する
ウォーターハンマーは水道管を通して音を伝える固体伝播音です。
マンションの場合、共通する大きな水道管から各家庭に水を供給しています。
その為、あなたの所で起きた音が別の家庭に響く事もあれば、当然その逆もあり、大きな騒音問題となる場合があります。
騒音だけでは済まないウォーターハンマーの被害
しかしウォーターハンマーの恐ろしさは騒音だけではありません。
『ハンマー』の名前の通り、この現象が起きるたび水道管は『ハンマーで殴られるような衝撃を受け続けます』。
衝撃を受け続けた水道管は、最終的に『水道管の破裂』という末路を迎える事になります。
その時には水漏れはもとより、大規模な交換工事が必要になるでしょう。
ウォーターハンマーへの対策
家庭でできる対策は『蛇口はゆっくり締める』という事です。
ウォーターハンマーは急激な圧力がかかる事で発生しますので、その圧力に逃げ場を与えるように少しづつ蛇口を締める事で、ウォーターハンマーの発生を抑制することが出来ます。
しかし構造的な問題で、どうしてもウォータ―ハンマーが発生してしまう事があります。
その時は管理会社に調査と修理を依頼するしか方法は無いでしょう。
低周波騒音
人の耳には聞こえない20Hz以下の音の事を『低周波』と呼び、その低周波が原因とされる騒音の事を『低周波騒音』と呼びます。
低周波の問題
この低周波は、どのような場所でも起きていますが、私たちの耳で聞き取る事は出来ません。
しかし体は敏感に振動を感じているため、『不快感』や『圧迫感』、さらには『睡眠障害』を引き起こすケースが少なくありません。
低周波は家も揺らす
また低周波には人体に影響を及ぼすだけでなく、家全体を揺らすほど大きなものもあります。
『風もないのに窓がガタガタと揺れる』『いつも決まった時間に人形が動く』『ひどい時には家全体が揺れる』といった被害も、全て低周波によるものだったという事例があります。
低周波騒音の解決策
低周波は非常に遮断するのが難しい音ですし、個人で原因を特定するのも困難でしょう。
騒音の原因が低周波と考えられる場合は、民間の調査機関か行政に依頼する事をお勧めします。
頭内爆発音症候群
他人には聞こえない騒音の一例です。
騒音の正体が、全て外部にあるとは限りません。
『一日中、ずっと唸るような音が聞こえ、低周波を疑ったが原因は耳鳴りだった』というケースもあります。
頭内爆発音症候群とは
眠りに落ちそうな時に、『突然、大きな音が鳴る症状』の事です。
爆発音と言われていますが、聞こえる音は人によって様々で、『爆弾の爆発する音』『ガラスが割れる音』『テレビの砂嵐』『人の叫び声』などなど。これらの音の種類にこれといった一貫性はありません。
病気を引き起こす原因
原因はストレスではないかと言われていますが、詳しい事は分かっていません。
それというのも、テレビで取り上げられ名前は有名になりましたが、症例が報告されたのは1988年と最近の事で医学文献にも詳しい記載がありません。
その原因として、『多くの場合、半覚醒のまま音を聞き、熟睡は出来なくても眠れるという事』や『症状は一時的な物で、気が付くと治っている事』があげられ、病院にかかる事が少ないと考えられています。
まずは冷静に原因を探る事から
騒音の原因を探ってみたら、5キロ離れたところに見つかったなど、音はその状況によって場所を特定するのが難しい場合があります。
隣の部屋がうるさいと怒鳴り込む前に、一度冷静になる必要があるのかもしれません。