拒食症の原因は、過度なダイエットだけではない!
拒食症は摂食障害の1つに分類され、神経性無食欲症やANの略語で呼ばれることも多い病気です。
男性よりも女性、特に10代~20代の若い女性に発症が目立つ病気であり、私たちがテレビや雑誌などのメディアでよく見かけるような芸能人にも罹患者が少なくありません。
美しさを維持するためのカロリーコントロールに失敗し、別人のように痩せ細ってしまった芸能人を目の当たりにする機会が多いためか、拒食症は過度のダイエットのせいというイメージが浸透していますが、原因はダイエットだけに限っていません。下記のように、さまざまな要素が根底にあると考えられています。
■問題ある家庭環境
- 父親または母親の過保護、過干渉
- 愛情不足
- 幼少期に受けた虐待・性的虐待
- それによる性的成熟の拒否
■対人関係の障害
■強迫的、完璧主義的な性格
■メディアの影響
■遺伝
体重の増加を恐れ、常軌を逸した行動をとるようになる
拒食症にかかると、食物を摂取することにより体重が増加することを異様に恐れるようになります。
それを防ぐために極端な食事制限に走ったり、食事したあとは必ず食べ物を吐き戻したり、大量の下剤を飲んだりといった、常軌を逸した行動をとるようになります。
明らかに痩せているのに肥満だと錯覚する、周囲の会話がすべて自分の体型に関する悪口だと思い込むなど、激しい被害妄想にとりつかれるのも、拒食症の特徴的な症状です。
また栄養失調の状態が続くため、月経停止、血圧低下による貧血、睡眠障害、骨粗しょう症、低カリウム血症など、深刻な合併症を引き起こしやすくなります。体の健康だけでなく心のバランスも崩れるため、リストカットやうつ病を併発してしまうケースも多いです。
なかには自ら命を絶つ患者も…治療は慎重を要する
拒食症の治療は心理療法がメインとなりますが、うつ病を合併している場合は薬物療法も取り入れられます。しかし症状の改善や完全回復までに導くのは容易なことではありません。拒食症患者の頭のなかでは、治す=食べる=太るという、誤った公式が出来上がってしまっているからです。
ですから治療を進めるためにはまず、その誤った認識を改めさせ、患者本人に病気であるという自覚や治そうという強い意思を芽生えさせる必要があります。しかし一歩間違えば悪化もしくは最悪の結果を招くこともありますから、治療は慎重を要します。最悪の結果とはつまり、命を落としてしまうことです。
主な死因は低栄養による感染症や心不全ですが、なかには自ら命を絶ってしまう患者もいます。
そうなると患者本人だけでなく、家族の今後の人生まで大きく狂わせてしまいますから、拒食症には十分用心すべきです。