上がり続ける学費、借金をして大学に通う若い世代
筆者が大学に通っていたのは、20世紀から21世紀にまたがる時代でした。それから四半世紀を過ぎている執筆中の現在、当時より大学の数は多くなり、大学への進学率も高くなっています。それと同時に学費も年々上がり続けています。
おおよそ、大学入学から卒業までにかかる学費は以下の通りと言われています。
- 国公立大 500万円
- 私立大学(文系) 700万円
- 私立大学(理系) 800万円
筆者が大学に通っていた時代より、国公立大、私立大と共に100万円以上は値上がりしているのではないでしょうか。
家庭の事情によっては、大学の学費を賄うのが難しく、奨学金という名の学費ローンを借りる学生も増えています。学費ローンは、要は単なる借金です。社会人になった途端に学費の返済がスタートするという重荷を背負うことになります。そのため奨学金を返済できずに破綻する人、貯蓄ができない人が増えて社会問題となっています。
奨学金負担の社会問題、大学の存在意義について深く突っ込むと、本シリーズの資産形成というテーマから外れてしまうので、ここでは本当に大学進学が必要か、資産形成の観点から考えてみたいと思います。
氷河期世代を過ごした親は学費を工面するのが大変
筆者自身も私立の4年制大学出身であり、学費は親に払ってもらいました。周りの同級生達もほぼそんな感じでした。
筆者の周りでは学費を自分で工面していたのは、「NO.1:収入額より資産額、学生時代までに身に着いたお金の価値観」で紹介した新聞奨学生の高校の同級生くらいではないでしょうか。
筆者の親世代というのは、昭和の高度経済成長、平成初期のバブル時代の恩恵を受けて社会人を経験していたので、総じて現在よりお金を持っている家庭が多かったと思います。
もちろん全ての家庭がそうだったと言うわけではありませんが、子供の大学進学への費用も当然ですがそれまでにかかる塾代、中学や高校からの私立の学校への進学費用にも躊躇いがあまりなかったように思えます。
1990年代前半のバブル崩壊後に、大学に進学した世代は、筆者の世代を含めて、就職氷河期世代などと言われて揶揄されます。その世代が今度は親になり、当時より高騰する大学の学費を工面するのに苦戦するのは、時代の流れで仕方ない現実だと思います。
本当に大学進学は必要か?
そもそも今の時代、大学進学は本当に必要なのでしょうか?
一般的に大学に進学する理由は、就職後、高卒よりも生涯賃金が多いからと言われています。
しかし大卒である筆者自身は、大学生当時からこの一般論に違和感がありました。
高卒で働けば、一般的に大卒よりも4~5年、早く働くことができます。更に一般的には親が負担しているとはいえ、大学の学費を差し引くとかなりの差がつくと思います。下手したら、大卒1年目の時点で高卒の人と事実上、稼いだ額は2,000万円くらいの差ができているのではないかと思います。
いくら同じ会社で、大卒と高卒で初任給に差がある、大卒と高卒では昇進スピードに差が出るとはいえ、奨学金でも背負っていたら、しばらくは高卒で既に働いている人と資産格差は縮まらないと思います。
更に今の時代は、NISA制度による長期積立を前提としたインデックス投資もあります。高卒で働けば18歳から投資することができるので、インデックス投資の最大の武器である「時間をかけた複利効果」を期待できます。
ここで見ていただきたい動画があります。
https://youtu.be/b76xfzCod6g?si=cDswmGHhrUlqwm8T
投資、資産形成系の動画サイトでは登録者数と動画の数、再生回数が一番多いと言われる、両@リベ大学長の「両学長 リベラルアーツ大学」の動画の一つです。
※投資、資産形成に関する情報はYouTubeに星の数ほどたくさんあり、大半の人はそこから情報を漁ると思います。本シリーズは少しでもYouTube 界隈の情報とは一線を画した、筆者独自の考えを発信しています。他のYouTuber 様の動画を紹介することは本望ではないですが、上記の動画は非常に重要な内容だと思うので紹介しました。
この動画では、具体的に18歳から4年間、月10万円をNISA枠でインデックス投資をして、その後、入金せず放置をしたら、年金が支給される65歳時点で、8000万円になっている計算になるというのです。これなら定年まで労働のみでお金を稼いでいた大卒者でも貯めることが難しい資産ですし、生涯ににかかる費用に充分なお金ではないでしょうか。
「積立投資は、元本と時間を味方につけるのが鉄則」でもお伝えしましたが、インデックス投資の時間と元本で複利効果を最大限に活かす発想です。未来はどうなるかは誰にもわかりませんが、過去データを元に計算したシミュレーションです。
積立投資をしながら高卒で働く
しかし、筆者は、この両@リベ大学長が言う「高卒1年目から月10万円を積立投資にまわす」のは、実家暮らしであっても現実的に厳しいのではないかと思います。
理由は、この世代はまだまだ遊びたい年齢だからです。この世代で月10万円の積立投資ができるというのは、かなり欲が少ないストイックな人でないと難しいと思います。
しかし、月10万円、4年間で480万円を積立投資で捻出するとまではいかなくても、もう少し積立額を減らして、年数をかけても充分な資産は築けると思います。
例えば、当時、筆者の周りの高卒で働いていた同級生達を見ると、すでに車を買って乗り回していたイメージがあります。つまり、車が購入できる資産を持っていたということです。
一方、同世代の大学生では車を購入するというのは非現実的です(ちなみに車の購入、維持も資産形成に大きな影響します(筆者は所有していません)) 。
また、高校生までは手にしたことない金額の給与を手にして、ギャンブルや夜のお店にお金を使いがちなのもこの世代の特徴ではないでしょうか。多少の遊び程度で済ませるなら問題ありませんが、これらにのめり込んでしまうと資産形成、人生そのものに大きな悪影響を与えかねません(これらの味を知ってしまうとのめり込む可能性が高いですが…)。
本シリーズの読者はどちらかというと、高校生や社会人なりたての若い世代よりもその親世代をターゲットにしています。その辺の自制は親がしっかりと金融リテラシーを持ち、子供に諭していくべきだと思います。
子供が高校を出て就職するか、大学や専門学校に進学するかは、家庭内でじっくり話し合うべきことですが、そこで一つ気をつけてほしいのは、子供の意思を最優先に考えて尊重するということです。
「うちはそこまで裕福ではないから、子供に高卒で働け」「学費が高いから国公立に行け」と言う親はとてもダサいし、格好悪いと思います。もし大学進学だけが選択肢ではないということを伝えたいなら、このような投資の話などを論理的に説明した上で、子供に選択権を与えるべきです。
筆者は独身ですが、もし進路に悩んでいる高校生の子供がいたとしたら、投資に対する考え方を教えて、こういう提案をしてみます。
「もし大学に進学しないで就職するなら、100万円を就職祝いにあげるから、その100万円はすぐに積立投資してみろ。そして、少額でいいから毎月からの給料からも積立投資していって、残った給料は好きに使え。」
そのためには、子供にはお金の話はタブーなどとは言わずに、幼い頃からお金に対する理解を高めるために積極的に金融教育をしていくべきです。そのためにはその親である大人がしっかりお金のことを学ばなくてはなりません。
日本社会では、大卒は単なるお飾りにしかすぎない?
両@リベ大学長は、大学には進学せず、高卒で、投資やビジネスに成功されている方です。
筆者は大卒なので、自身の体験、多少の偏見を元に大学に関して率直な気持ちをお話します。
日本の場合、大学で何を学んだかより、大卒や◯◯大卒という肩書きが重要視されるのが現実だと痛感します。
大学は就職予備校ではなく、学問を学ぶために行くところだと言う人もいますが、これは綺麗事だと思います。文系、理系関係なく、大半の人は就職を有利にするために進学します。
日本の大学の場合、実社会に出るビジネススキルを学ぶというより、大学院に進学する、研究者になるための第一段階が大学の教育課程になります。なので、大学で一生懸命に勉強しても、社会に出てもほとんど役に立たないものばかりなのです。
また企業側も大学で何を学んだより、どこの大学を出たか?ということを重視します。これは昔からある大手企業と言われているところに多いです。大手企業だと応募者が殺到するので、最初の選考の段階で、いわゆる学歴フィルターにかけてしまうのも仕方ないことだと思います。
そのため、学問を追求したい大学側とビジネスでの実利を追求したい企業側で、乖離が発生しているというのが、昔からの日本の歯がゆい現状だと思います。専門的な知識を要する理系の研究職でない限り、大半の人が就く職種である、一般的な事務や営業などはわざわざ大卒ではなくても、高卒、いや義務教育を受けた人なら、経験していけば務まることだとは思います。
筆者は国際物流、貿易業界で働いていますが、同じ課で働いている人でも、日本のトップクラスの大学を出た人から高卒の人まで、デスクを並べて同じ仕事をしています。
まだまだ日本社会は学歴という表向きの肩書きが重要視されますが、実際にはお金という面に関していえば高卒、大卒にそれほど差がありません。それどころか、昨今は日本政府も投資を国民に後押ししているので、むしろ仮に給料は低くても、早く社会に出た方が投資で得られる利益を享受できるくらいなのです。
両@リベ大学長も動画で近年は高卒の求人も増えてきたと具体例を述べて語っていますし、その辺を考慮して、親子で進路をじっくり話し合うと良いと思います。
また、筆者は大学受験をテーマにした記事「受験に勝つ!世界史の勉強法」も書いています。そのシリーズの中にある、筆者の体験を元にした「No.26:偏差値50以下の高校生がMARCHを突破する方法-その1」という全4話の記事では、可能な限り塾や教材に無駄なお金をかけないでコスパよく合格するかということを述べています。
大学の学費もそうですが、塾、私立学校への進学、そこまでにかかる費用も非常に高額です。世の中は教育ビジネスが蔓延して、受験生の家庭から少しでもお金を絞り取ろうとしているのです。
第一希望の大学には合格できず、浪人も経験しましたが、その反省も踏まえて、地元の偏差値50以下の公立高校出身の有名私大へ進学した筆者が書いた記事ですが、進路の選択、大学受験の参考の一つにしていただければ幸いです。これは資産形成、節約にも通じる内容でもあります。