すでに変わりつつある函館
観光地でブームの予兆
函館の奥座敷、湯の川温泉では、ホテル、旅館が新幹線開業に向けて動き出している。
旅館、リゾートホテルの中には、客室数を広げ、海を望むビュッフェラウンジなどの新設工事を始めたところもある。
逆に、客室数を減らそうとするホテルもある。部屋を広げて高級感を出し、セレブ層の取り込みを狙う戦略だ。
同様に他の観光スポットでも、開業後に向けてイベントプランがいくつも練られている。
劇的な変化の前に函館を見ておこう
函館が変わる!
その前に、今の魅力を知っておくと、さらに楽しみが広がるのではないだろうか。ビルや照明の夜景が目前に広がる光景ならば、東京スカイツリーの方が圧倒的かもしれない。
高さ334mの函館山の展望台から市街地を見下ろすのは、雄大さというより、まるで宝石箱のような夜景が印象的だ。
函館山は半島状に突き出た平野の突端にある。
昼間、頂上から半島平野部を見下ろすと、函館山に向かって、くびれて細くなる平野部の両側に海が見える。
この光のアーチが、周囲の海の闇の中で、浮かび上がるよう見えるのが、函館の夜景の独特の景観となっている。
特に夜にイカ釣り船が出漁する初夏から晩秋にかけては、漁火も加わって絶景となる。
函館市も、街路灯の色をオレンジに統一したり、歴史的建造物をライトアップしてきた。
そうしたことで、頂上から見える光りのアーチに繋がりができたり、アクセントが生まれて、この夜景は変化してきた。
しかも、新幹線開業後は、この夜景に新しい試みが考えられているという。
可愛らしい函館の夜景にどんな光の宝石が加わるか?今から楽しみだ。
変わって欲しくない函館朝市
今でも観光客に大人気の函館朝市。
函館駅のすぐ近くにあり、北海道の新鮮な魚介類、乾物や野菜の店が多く並んでいる。函館朝市の「どんぶり横丁」に約20軒もの海鮮丼を提供する店がある。
ウニ、イクラ、エビ、ホタテやカニなど、それぞれの店が個性を競った山盛り海鮮丼を提供している。もちろん、鮮度は文句なしの美味しさだ。
map ⇒ どんぶり横丁
函館の名物にイカがある。
函館育ちの60代以上の人の中には、毎朝、自宅の近くにその朝捕れたイカを売りに来たことを覚えている人が多い。
函館市民にとっては当たり前の美味しいイカだが、本州から訪れた人が一番驚くのが、コリコリとしたイカの歯ざわりの良さだ。
函館のイカは、スルメイカとヤリイカだ。
関東などで食べられる、アオリイカと比べ、身は薄いが、新鮮な身は半透明で身がよくしまっている。そのためコリコリとした歯ざわりがある。
細く長く切ると、まさに「イカそうめん」。ツルッとのどごしが美味しい。
函館朝市ひろばの隣にある「えきに市場」には、生きたイカの釣り堀がある。
このイカの釣り堀、初めてでも簡単に釣り上げることができて、釣り上げたイカはそこの調理場ですぐにさばいてくれるので、新鮮なイカ刺しを味わえるとあって人気だ。
ちなみに、函館のご当地キャラは「イカール星人」。イカに似せたゆるキャラが市場にもいる。
新鮮で美味しい函館朝市は今後も変わって欲しくない場所。
新幹線開通を記念して、新たなB級グルメの登場を期待したい。
地元押しグルメ
スープを作るには、豚骨、鶏がら、ほたての貝柱、昆布、野菜などを寸胴に入れ、濁りをださないように火加減を注意して長い時間をかけて旨みを出す。
麺はスープとの相性が良いようにストレートの細麺が一般的。スープ第一なので、具はチャーシュー、長ネギ、メンマ、わかめなど、シンプルに盛り付ける。
テレビ番組の健康特集に度々取り上げられたことで、「がごめ昆布」が人気になっている。
アルギン酸、フコイダン、ラミナランなどの粘り成分が豊富で、ガンや動脈硬化、高血圧の予防などや美容にいいと注目されている。
水に一晩漬けておくと、とろみ成分が染み出した「がごめ昆布水」ができる。このがごめ昆布水はそのまま飲用にする。
そして柔らかくなった昆布は、細かく切ってネバネバ料理に使う。
納豆やたらこ、浅漬け、大根おろしにかつお節と和えたり、刺身と合わせると昆布締めの風味が移り、旨みが増す。
歴史的な建物や街並みを楽しむ
函館山の麓にある港や函館駅に向かう一帯は、かつては江戸時代から明治にかけて栄えた地域であった。
そして、明治初期の最先端の建築技術だった和洋折衷様式が多く、異国場所あふれる街並みとなっている。
それらの建物が山から海に向かう数々の坂に存在し、坂の上から海を望む風景を美しいものにしている。
二十間坂と大三坂にある「東本願寺函館別院」は日本初のコンクリート寺院。
map ⇒ 東本願寺函館別院
大三坂の上の「函館ハリストス正教会」は日本初のロシア正教の教会で、「元町カトリック教会」は、ローマ法王から寄贈された祭壇がある。map ⇒ 函館ハリストス正教会
坂の途中には、小さな古民家や、改造したカフェなどの飲食店も多い。
さらに市街地には、旧金森洋物店を改修した市立函館博物館強度資料館がある。
map ⇒ 市立函館博物館強度資料館
和洋折衷の防火煉瓦造りで新しさを取り入れた明治の様式が今に伝わる。旧イギリス領事館は、開港記念館として公開されており、内部には喫茶室や英国雑貨店もある。
函館ベイエリアの代表的な観光スポットが金森赤レンガ倉庫だ。今では、ショッピングモールやビアホール、イベントホールとして賑わっている。
map ⇒ 金森赤レンガ倉庫
歴史好きは、ここを外せない
明治維新戊辰戦争最後の戦い、箱館戦争の舞台となったのが五稜郭だ。
独特の星型城郭が特徴。榎本武揚らの「蝦夷共和国」の夢は潰えた場所でもある。
現在、内部には松前藩の箱館奉行所が再現されている。
さらに、函館市内には箱館戦争激戦の跡である、権現台場跡や弁天台場跡、土方歳三最期の地碑や、旧幕府軍の戦死者約800名を弔った碧血碑などがある。
函館の地が、江戸時代から明治時代に転回する場面となった場所が市内に残っている。
新しい函館の一つ
東京・代官山にある「代官山蔦屋書店」は、「大人のTSUTAYA」呼ばれ、賑わっている。
文化のコンシェルジュがそろい、「今、読まれるべき本」や雑誌、映画、音楽など、ここでしか手に入らないものが揃うスポットとして人気だ。
そんな大人のTSUTAYAである代官山蔦屋書店2号店があるのが、函館だ。2013年12月に誕生した。
代官山蔦屋書店は、いわゆる大型ショピングモールによって地域活性を目指すことを目的とはしていない。
本や音楽を求めて、ゆったりと過ごせる、「人と人、人と文化をつなぐ場」として根付いている。