歴史科目の受験勉強の辞書は、用語集ではなく流れ本
用語集を使うのは時代遅れ
世界史、日本史の受験勉強では、辞書用に山川出版社の用語集を手元に置いておくのが一般常識になっています。また、昔から早慶などの難関私大の入試で点数を稼ぎたい受験生は、用語集を暗記しているというような都市伝説もありますが、用語集の役目はわからない用語があったら、英語の辞書のように調べて確認することです。
しかし、今はインターネット、スマートフォンでわからない用語を検索すれば、すぐに調べることができる時代です。用語集を手元に置いておく必要はありません。受験生や教養として歴史を勉強している人達がわかりにくいのは、用語ではなく流れとも言われる歴史の因果関係だと思います。教科書やインプット用の参考書でも掴みにくいことがあると思います。
そこで用語集ではなく、世界史の流れを掴むための確認用として、手元に置いておきたいわかりやすい1冊を紹介します。
ちなみに歴史用語を検索すると、wikipediaか「世界史の窓」というサイトがヒットすると思いますが、大学受験を意識した「世界史の窓」をオススメします。ぜひスマートフォンなどでお気に入りに入れておいてください。
▼世界史の窓https://www.y-history.net/
公立高校の世界史教師YouTuberが書いた教科書
現職の高校教師が、YouTuberで世界史の授業を動画配信していたことから、ムンディ先生の愛称で親しまれ、わかりやすい神授業として口コミで広まり再生回数850万回を突破。
そのムンディ先生こと山崎先生が、2018年8月に高校生だけでなく、世界史を学び直したい大学生、社会人向けの世界史のストーリーがわかる本を出版しました。
本書の特徴としては、世界史の知識が乏しい読者にも読みやすいように、地域別に構成されていることと、年号を一切省いていることです。
大学受験のカテゴリーだと、「世界史を本格的に勉強する前に、流れを掴むための参考書」の部類に入ります。
世界史を勉強する受験生にとって、最初の段階で時代や地域のつながり、因果関係が分からなくなり躓くことが多いとされています。そんな時に、確認用の辞書として価値を発揮します。
それくらいムンディ先生が工夫してわかりやすい言葉で説明してくれています。
例えば、戦後史を解説した本書籍の10章「現代の歴史」では、下記の記述があります。
ベルリンの西側地域(西ベルリン)は、ソ連側の中に浮かぶアメリカ側の”浮島”のようになってしまいました。
教科書では重要用語が太字になっていますが、本書では因果関係や盲点になってしまいがちな文章は太字+下線で書かれています。
戦後、東西に分裂していたドイツは、ベルリンの壁が東西ドイツを分裂していたイメージがありますが、実際には、東ドイツ領内にあるベルリンが、飛び地のように存在して西側と東側に別れていたのです。
「【受験に勝つ】世界史の勉強法シリーズ」では、受験生には入試の問題集の暗記をメインとするアウトプット型の勉強方法を提唱しています。しかし、問題集で入試で点数を取る形で覚えたものをブラッシュアップする時にインプット型の参考書が必要となります。勉強していてインプット型の参考書に戻ってもいまいち理解できない時があるかもしれません。
そんな時に「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」は、辞書代わりとして使える本としてオススメです。かみ砕いたやさしい言葉で説明しているので、頭の中への定着度も上がることでしょう。
また、ある程度世界史の知識をつけた人が読んでも、大変理解しやすく、かつ面白く読めるものなので、世界史を学ぶ人なら一冊持っていても損にならないと思います。
流れ本は、初学者が入門書として使うと痛い目にあうことがある
世界史でも日本史でも、流れを掴んでから本格的に覚えていくという勉強の仕方が吹聴されていますが、どんなに平易に書かれた本でも、歴史の通史を覚えるのは大変な労力です。
初学者が流れ本を読んで、どこまで覚えればいいのかわからなくなり挫折するパターンも多いと思います。
歴史の流れは、ある程度の知識量がついてないと身に付けることができないもの。
これは受験生だけでなく、歴史を教養として勉強したい大学生や社会人にもいえます。巷では歴史をもう一度学び直すような類の本も目立ちますが、それらの本を使ったとしても、通史を覚えるのはそれなりの覚悟と労力が必要となります。
受験勉強も教養としての勉強も「学問に王道は無し」なのではないでしょうか。
ムンディ先生の本は大学受験でどこまで通用するか?
著者のムンディ先生曰く、
センター試験の世界史の4択問題を2択まで持ち込めて、平均点は取れるレベル
を想定して執筆されたようです。(出版記念イベント内での話)
アフリカ、東南アジア、朝鮮史、文化史は省かれていますが、仮に「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」をインプット用の参考書として使っても、基本的なアウトプット用の問題集と合わせれば、センター試験は7割5分前後、中堅大学までなら合格点は届くのではないかと思います。
その理由は、地図、図解が充実しているからです。近年の入試では地図問題が増加傾向です。他の参考書だと必要以上に地図に細かいことが記載されていることが多いのですが、地図や図解の説明は最小限の説明にとどめ、視覚的にも、抵抗なく頭に入っていくと思います。また、アフリカ、東南アジア史はヨーロッパの帝国主義、朝鮮史は中国史で絡めて出てきますので、完全に省かれているわけではありません。文化史も必要最低限のものは巻末付録に掲載されています。
世界史も日本史も、基本的なことだけでも通史を終わらせた方が、点数に結びつきやすいのです。
辞書用として本書籍を使っていた受験生も、最後の仕上げとして、年が明けた受験直前に本書の地図、図解を全て見直すことをオススメします。ある程度知識をつけたこの時期なら、地図、図解を見ただけでも流れが頭に入っていきやすいと思います。そして、本文では省かれていた巻末にある84個の年号を頭に叩き込みましょう。
大学生と社会人のムンディ本の活用方法
興味のある地域、時代を熟読する
受験生ではなく、大学生や社会人で世界史を勉強し直したい人達は、まず興味のある地域、時代から読んでみることをオススメします。
文系学部の大学生なら、授業で扱う地域や時代の章を熟読してみましょう。一通りの知識があるだけでも、授業への理解度、関心が深まるはずです。
もちろん、人類の誕生から世界史を改めて勉強したい人にも最適な本です。最初はヨーロッパ、中東、インド、中国の4つの地域を取り上げ、世界がグローバル化する大航海時代は4つの地域が一体化する過程が説明されています。
大学生・社会人問わず、海外旅行へ出かける際は渡航先の地域の歴史を頭に入れておくだけでも、旅行中の楽しさが変わってくるはずです。受験や大学の授業で学んだ知識を実際の現場で見てくると、知的好奇心が刺激されるものです。
世界史受験だった人達は、受験が終わっても「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」やインプット用の参考書は取っておいた方が良いです。
日本史や数学受験で文系学部に進学した人も、世界史の知識が大学の授業で必須になりますので、本書籍や本シリーズでインプット用参考書として薦めているマンガの「大学受験らくらくブック 世界史」を持っておくことをオススメします。
そして、自分が興味を持った時代、地域の知識を深めていってください。高校で習う世界史の知識はその橋渡しの世界へのパスポートになってくれることでしょう。