文系学部の場合、大学の授業で世界史の知識があると有利
経済学部は、近現代の政治史、経済史が軸となる
世界史を受験に使う人の多くは文系の学部に進学すると思いますが、経済、政治、法律、文学など現代の文系の学問は、世界史の中で誕生、発展してきたものです。なので、世界史の知識があることを前提に大学の専門科目の授業は進んでいきます。
筆者は経済学部でしたが、受験の世界史のヨーロッパ史に出てくる経済学者や経済理論の知識は、あらゆる専門科目で必要になります。
19世紀のイギリスの貿易政策を学ぶ「経済学史」という授業がありました。
世界史ではイギリスの資本家であるコブデン、ブライトが反穀物法同盟運動を展開し、1846年に穀物法が廃止されたと学びます。ある日の大学の授業ではその背景の知識を深く掘り下げ、穀物法を廃止したことを支持するか?または反対するか?自分の見解を論理的に書くレポート課題がありました。
アジア地域を扱う授業でも共通して必要な知識は、戦後、欧米各国から独立した経緯です。
今のアジアの経済を理解するためには、戦後のアジア発展の歴史を知ることが不可欠です。その知識の基礎は世界史に出てくる戦後のアジア史になります。
また、アジアに限らず現在の国際ニュースを理解するためには歴史の知識は必須です。
テロのニュースの時、必ず報道される過激派イスラム原理主義「イスラム国」。イスラム教を理解するためには、まずイスラム教の起源、コーランとは何か?から始まります。そのイスラム教の基礎知識は世界史で学ぶことができます。
ちなみに経済を学びたての大学1、2年が受講する「経済史」という授業は、ほとんど世界史の近現代(特に欧米地域)の経済史の知識があればテストが乗り切れるものでした。世界史の知識の貯金があれば単位取得に有利に働く科目は意外に多いです。
大学生も学問の入門はマンガから入るのがオススメ
大学受験が終わった後も、世界史の教材は取っておいた方がいいと思います。特に「大学受験らくらくブック 世界史 近現代編」は、世界史受験以外で文系学部に入った人も持っておくといいかもしれません。
余談ですが、大学の学問は高校までの科目よりも一気に内容が深く専門的になります。大学入学当初は、高度な内容の大学の授業に興味が持ちにくくなるかもしれません。その場合は、各分野のマンガの入門書を通読することをオススメします。
経済学部なら「マンガでわかる経済の基本~」のような本から入っていけば、大学の授業の内容も少しずつわかってくるようになると思います。基本知識を知らないと大学の学問は理解できるようになりません。
海外旅行が面白くなる
大学生は長期の休みなどを利用して海外旅行に行く人も多いです。特に世界史で受験した人は海外志向が強い人も多いでしょう。
例えば、ヨーロッパに行くと、受験の時に暗記した戦争や条約の名前の地名がそこら中にあり「ここがあの場所か」と点だった知識がつながる体験をすることができます。
学生バックパッカーに人気の東南アジアも王朝や宗教、宗主国の歴史を知っていると、旅の面白さが深まります。
そういう知的好奇心が刺激される経験ができるのは、大学受験で世界史を勉強した人の特権です。
「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡シリーズ」、それを元に書籍化した著書「ヒトラー 野望の地図帳」のベースも同じです。授業や教科書、本で学んだ知識の現場に実際に足を運び、自分の目で見る面白さを覚えていきました。筆者も大学に入り世界中を旅するようになり、大学受験の時に世界史を選択しておけばよかったなと思ったものです。
日本史の史跡は国内であるためいつもで行けるかもしれません。しかし、海外という簡単に行くことができない物理的空間が、国内旅行では味わえないような好奇心を刺激してくれるのです。
現地で知的好奇心を刺激され、更にその地域や時代を深く知りたいと思ったら、それから受験時代の暗記を超えた本当の歴史の勉強が始まるのです。それは通っている大学の学部の授業に役に立つかもしれませんし、生涯を通じて学ぶ新しい趣味の一つになるかもしれません。
社会に出てからも、本や映画などで好きな地域、時代の歴史研究をしているビジネスマンもたくさんいます。
筆者が海外に目覚めたきっかけは、「戦争遺跡ライターになったのは、激動の時代ヨーロッパの歴史を知ってから」編を参照
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
価格 :1,512円(税込)
世界各国の歴史を人生で学ぶ唯一の機会である大学受験
歴史の先生や研究者でもない一般の人が、古代から現代までの世界各国の学ぶことができるのは、大学受験で世界史を受験科目に選んだ人だけです。受験生はそこまで意識をする余裕はないと思いますが、受験のための暗記もその後の人生の知識の糧になっていということを心の隅に置いておいてください。
世界史Bに関しては今までは長年、高校の必修科目となっていたので、高校1、2年生の時、週4時間、世界史Bの授業が多くの学校で行われてきました。しかし、1年間、週4の授業をしてもせいぜい全時代の半分くらいしか授業でカバーできないのが現実です。理系や世界史を受験につかない生徒は中途半端にしか世界史を学べません。それに受験に使わない科目を本気で勉強する人はほとんどいないです。
受験勉強で世界史を使うからこそ、大学に合格するために全時代、全地域の歴史を本気で覚えようとします。受験科目と単位を取れればいいやレベルの非受験科目では、頭に残っている知識、思い入れが全く違うのは当然です。
世界史は、受験時代は大学に合格する道具として、大学入学後は受験時代に暗記した知識がその後の人生を有意義にする一つのベースとなれれば、勉強した意味があったことになるのではないでしょうか。