No.25:北朝鮮の街が見渡せる中国東北部の国境の街、丹東レポート-その1|トピックスファロー

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2019年9月30日
No.25:北朝鮮の街が見渡せる中国東北部の国境の街、丹東レポート-その1

戦前、満州国があった中国東北地方は、川を挟んで北朝鮮と国境が続いています。その内の一つが、遼寧省の丹東。丹東は中国と北朝鮮の国境の中で最大の都市です。その丹東を2ページ構成で紹介します。「その1」です。

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北朝鮮の街並みを一望できる丹東

中国側の国境からでは北朝鮮が気軽に遠望できる

2019年現在、日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、国交がないため、正式なルートでは北朝鮮へ渡航することができません。ですから、日本国籍を持った人が合法的に北朝鮮を自分の目で見るためには、韓国の朝鮮戦争の北緯38度線と呼ばれる休戦地帯(DMZ)に行くか、中国東北部の北朝鮮との国境の街から眺めることしかできません。

韓国側から北朝鮮を眺める場合、DMZツアーなどの手続きが必要になりますが、中国との国境では、自由旅行で気軽に北朝鮮を眺めることができます。

北朝鮮との国境の街で最大である遼寧省の丹東(たんとう)へは、首都の北京からは列車で約6時間20分、大連からは約2時間、瀋陽からは約1時間30程です(中国の新幹線である高鉄利用の場合)。

丹東駅前。毛沢東の銅像がある丹東駅前。毛沢東の銅像がある

旧満州国の痕跡を歴史背景と一緒に追いかける旅 その1~その3」で紹介した、中国東北地方へ旅行に行くなら、大連や瀋陽から日帰りで立ち寄ることもできます。また、大連~瀋陽~長春~ハルビンルートを巡る際も、大連~瀋陽間で丹東を挟むこともできます。

高層ビルが立ち並ぶ丹東の街高層ビルが立ち並ぶ丹東の街

観光地化している中国側の丹東

丹東駅から歩いて、10分足らずで、北朝鮮との自然国境線である鴨緑江(おうりょくこう)に着きます。川幅は約1km弱で対岸は、北朝鮮の新義州(シニジュ)という街です。

丹東と新義州の間には、中朝友誼橋(ちょうちゅうゆうぎきょう)で結ばれています。橋は鉄道と道路が敷かれていて、道路は中朝双方が時間帯によって、一方通行として利用されています。筆者が訪れた時間帯は、新義州から丹東への通行の時間帯だったようで、何台かのトラックや団体客を乗せたような観光バスを目にしました。

中朝友誼橋中朝友誼橋

中朝友誼橋の隣は、かつて日本が建設した鴨緑江断橋(おうりょくこうだんきょう)ありますが、朝鮮戦争でアメリカ軍の爆破によって破壊されたままです。現在では観光用に橋の折れた部分まで歩いて行けますが、残念ながら筆者が訪れた時は、天候不良のために閉鎖されていました。

左が中朝友誼橋、右が鴨緑江断橋左が中朝友誼橋、右が鴨緑江断橋

橋周辺は公園となっています。北朝鮮をバックに記念撮影したり、北朝鮮の衣装「チマ・チョゴリ」を貸し出す露店もあり、チマ・チョゴリをまといながら雰囲気を楽しんでいる観光客がたくさんいました。北朝鮮との国境の街という緊張感は、ほとんど感じられません。

チマ・チョゴリを貸し出す露店チマ・チョゴリを貸し出す露店

中朝友誼橋の真下の様子中朝友誼橋の真下の様子

丹東駅、橋周辺は、ハングル語も目立ち、北朝鮮の料理、冷麺のレストランなどがたくさんあり、中朝の経済交流がさかんなのがわかります。

ハングル語の看板ハングル語の看板

人気が感じられない、北朝鮮の新義州

丹東から約1km先の新義州の街並みを鴨緑江沿いに眺めることができます。

まず中朝友誼橋周辺から見える新義州の風景で目立つのは、円形状の形をした20階を超すと思われる建築中の高層建築物です。その前には、プールの滑り台らしきものも見えますので、レジャー施設を備えたホテルなのではないかと思います。

この高層建築物は、2018年頃、突如として建設が始まり丹東側でも話題になったそうですが、筆者が訪れた2019年8月現在は、工事が中断しているようでした。

大型ホテルと思われる建築中の高層建築物大型ホテルと思われる建築中の高層建築物

またその高層建築隣には、観覧車らしきものもあり、遊園地があるようです。しかし、この観覧車も動いている気配はありません。

動いていない観覧車動いていない観覧車

新義州側から見た観覧車。列車で北朝鮮へ入国した筆者の友人が撮影新義州側から見た観覧車。列車で北朝鮮へ入国した筆者の友人が撮影

中朝友誼橋から左側に見える煙突は、日本統治時代に王子製紙工場のものとして建てられました。

旧王子製紙工場の煙突旧王子製紙工場の煙突

筆者は中朝友誼橋から1kmほど鴨緑江沿いを散策しましたが、マンション住宅や工場などがありますが人気が感じられませんでした。新義州の沿岸には船舶が停泊して、汽笛は頻繁になっていましたが、目視で確認できた人間は、鴨緑江沿いにオートバイで運転していた1人だけでした。

マンションやホテルらしき建物が見える新義州。丹東側から遊覧船ツアーもあるマンションやホテルらしき建物が見える新義州。丹東側から遊覧船ツアーもある

丹東側から眺める限り、ゴーストタウンという感じの新義州ですが、中国との国境地帯である新義州周辺は新義州特別行政区として、市場経済を試験導入するために自治権が認められていました。しかし、現在は凍結されています。

No.25:北朝鮮の街が見渡せる中国東北部の国境の街、丹東レポート-その1
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【連載】受験に勝つ!世界史の勉強法

著者:ヒロマル

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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
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2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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