北朝鮮の街並みを一望できる丹東
中国側の国境からでは北朝鮮が気軽に遠望できる
2019年現在、日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、国交がないため、正式なルートでは北朝鮮へ渡航することができません。ですから、日本国籍を持った人が合法的に北朝鮮を自分の目で見るためには、韓国の朝鮮戦争の北緯38度線と呼ばれる休戦地帯(DMZ)に行くか、中国東北部の北朝鮮との国境の街から眺めることしかできません。
韓国側から北朝鮮を眺める場合、DMZツアーなどの手続きが必要になりますが、中国との国境では、自由旅行で気軽に北朝鮮を眺めることができます。
北朝鮮との国境の街で最大である遼寧省の丹東(たんとう)へは、首都の北京からは列車で約6時間20分、大連からは約2時間、瀋陽からは約1時間30程です(中国の新幹線である高鉄利用の場合)。
「旧満州国の痕跡を歴史背景と一緒に追いかける旅 その1~その3」で紹介した、中国東北地方へ旅行に行くなら、大連や瀋陽から日帰りで立ち寄ることもできます。また、大連~瀋陽~長春~ハルビンルートを巡る際も、大連~瀋陽間で丹東を挟むこともできます。
観光地化している中国側の丹東
丹東駅から歩いて、10分足らずで、北朝鮮との自然国境線である鴨緑江(おうりょくこう)に着きます。川幅は約1km弱で対岸は、北朝鮮の新義州(シニジュ)という街です。
丹東と新義州の間には、中朝友誼橋(ちょうちゅうゆうぎきょう)で結ばれています。橋は鉄道と道路が敷かれていて、道路は中朝双方が時間帯によって、一方通行として利用されています。筆者が訪れた時間帯は、新義州から丹東への通行の時間帯だったようで、何台かのトラックや団体客を乗せたような観光バスを目にしました。
中朝友誼橋の隣は、かつて日本が建設した鴨緑江断橋(おうりょくこうだんきょう)ありますが、朝鮮戦争でアメリカ軍の爆破によって破壊されたままです。現在では観光用に橋の折れた部分まで歩いて行けますが、残念ながら筆者が訪れた時は、天候不良のために閉鎖されていました。
橋周辺は公園となっています。北朝鮮をバックに記念撮影したり、北朝鮮の衣装「チマ・チョゴリ」を貸し出す露店もあり、チマ・チョゴリをまといながら雰囲気を楽しんでいる観光客がたくさんいました。北朝鮮との国境の街という緊張感は、ほとんど感じられません。
丹東駅、橋周辺は、ハングル語も目立ち、北朝鮮の料理、冷麺のレストランなどがたくさんあり、中朝の経済交流がさかんなのがわかります。
人気が感じられない、北朝鮮の新義州
丹東から約1km先の新義州の街並みを鴨緑江沿いに眺めることができます。
まず中朝友誼橋周辺から見える新義州の風景で目立つのは、円形状の形をした20階を超すと思われる建築中の高層建築物です。その前には、プールの滑り台らしきものも見えますので、レジャー施設を備えたホテルなのではないかと思います。
この高層建築物は、2018年頃、突如として建設が始まり丹東側でも話題になったそうですが、筆者が訪れた2019年8月現在は、工事が中断しているようでした。
またその高層建築隣には、観覧車らしきものもあり、遊園地があるようです。しかし、この観覧車も動いている気配はありません。
中朝友誼橋から左側に見える煙突は、日本統治時代に王子製紙工場のものとして建てられました。
筆者は中朝友誼橋から1kmほど鴨緑江沿いを散策しましたが、マンション住宅や工場などがありますが人気が感じられませんでした。新義州の沿岸には船舶が停泊して、汽笛は頻繁になっていましたが、目視で確認できた人間は、鴨緑江沿いにオートバイで運転していた1人だけでした。
丹東側から眺める限り、ゴーストタウンという感じの新義州ですが、中国との国境地帯である新義州周辺は新義州特別行政区として、市場経済を試験導入するために自治権が認められていました。しかし、現在は凍結されています。
No.25:北朝鮮の街が見渡せる中国東北部の国境の街、丹東レポート-その1
>No.25:北朝鮮の街が見渡せる中国東北部の国境の街、丹東レポート-その2