相対評価と絶対評価。評価方法の移り変わり
公立の高校入試のときに必要だった内申点。内申点とは、中学校での通知表の数値(成績)で点数化したものですが、そもそもどのように評価されて成績はつけられていたのでしょうか。
過去の筆者のときの評価方法と、現在の評価方法を見比べてみましょう。
相対評価だった筆者の中学時代
筆者が中学生の頃(1992年~1994年)は相対評価でした。
相対評価とは5段階の成績で、「5」は全体の人数の5%、「4」は全体の人数の20%、「3」は全体の人数の30%…というように各段階で人数が決められていました。
評価も基本的には、英語、国語、数学、社会、理科の主要5科目に関しては99%定期テストの点数で判断されました。
例外として、「体育、音楽、美術、技術・家庭科」の技能4教科は、定期テストの点数だけでなく、実技も評価対象となっていました。そのため技能4教科は、科目の性質上、担当の先生の主観、好みなどが評価に反映されてしまう可能性があったかもしれません。
先生の評価が加算される教科。内申点への影響の大きさ
当時、筆者が住んでいた神奈川県の県立高校の入試の評価方法は、技能4教科の評価が2倍、主要5科目が1.5倍で内申点に加算されていました。そのため、技能4教科が得意な方が高校入試では有利でした。
ちなみに筆者は、主要5教科は平均して4程度の成績を取っていましたが、技能4教科が苦手で、平均が2以下でした。そのため内申点で稼ぐことができず、泣く泣く中堅レベルの高校に進学すること…。当時はこの神奈川県の内申点の加算方法を恨んだものです。
現代の評価は「絶対評価」。思わぬ落とし穴もある
現在、導入されている絶対評価は、都道府県によって若干の差異はありますが、各成績の人数が決められていません。
絶対評価の場合、相対評価と違い「成績評価「5」は全体の人数の5%」というような人数制限がないため、全員が評価「5」ということもありえます。
一見「良い点数をとれば、みんな良い成績を取れるし、公平になった!」と思われるかもしれませんが、ここに「落とし穴」があります。
評価方法が昔と変わってきているのです。
現在は、定期テスト以外に「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」などの観点別評価も加味されます。観点別評価は担任の先生によっておこなわれます。
つまり、数学の定期テストでコンスタントに80点を取れていても、授業態度が良くないと判断されたら、50点しか取れていない生徒と同じ「3」がつく可能性があります。
反対に定期テストの点数が悪くても、意欲を持ち授業に取り組んでいれば、上位の成績がつく可能性もあります。たとえ苦手な科目であっても、「関心・意欲・態度」が良ければ成績を多少なりとも挽回できるチャンスがあるといったメリットがあります。
観点別評価が与える影響・デメリット
観点別評価は良い面もあれば、リスクとも思えるデメリットもあります。
理由は、観点別評価は昔の筆者の「技能4教科における実技評価」と似ている部分があるからです。つまり、多少なりとも先生の主観、好みなどが反映される可能性があるのではないでしょうか。
実際に評価に不満を感じる生徒や親御さんの多くは、人による不透明な評価によって成績が左右されることに納得がいっていません。
昔の筆者の主要5科目は、判断基準は定期テストのみでした。そのため、仮に授業態度が悪くても、定期テストで良い点数を取れば、生徒の点数に順じて評価に反映させると何人かの先生が話していた記憶があります。しかし、そんな「観点別評価」がない時代であっても、先生に悪いイメージをもたれると、点数関係なく良い評価がつかなかったという知人の話も聞いたことがあります。
当時の知人のケースは、先生が成績に点数以外の評価を入れてしまうという稀なケースだったかもしれませんが、現代の評価手法では稀ではありません。かならず先生の評価が入ります。そして、その評価は内申点への影響が大きいものとなっています。
すべての先生が好みや偏った思想のもと評価をするとはいえませんが、ごく一部にはそのような評価がおこなわれるリスク・デメリットを含んでいることも見過ごせません。
取り組む姿勢で勝負するか?実力で勝負するか?
では、内申点を上げるために、取り組む姿勢を評価されることに力をいれるのか。それともあくまで学力(実力)を高めることに力を入れるのか、どちらのほうが良いのでしょう。
これは一概にどちらが良いとの答えはないと思います。自分にとって相性が良い、合っていると思う方を選択すれば良いでしょう。
姿勢で評価されることは、将来的にも役立つ
中学校で高い内申点を得るには、テストの点数だけでなく、先生に「関心・意欲・態度」を評価されることも必要となります。
その「関心・意欲・態度」が内申点を気にして意識的に作られたものか、そうでないかは別にして、周囲から評価されるのは一種のスキルでもあります。
これらのスキルは会社に入ってからの武器にもなります。
社会に出て会社に入ると、仕事ができるだけで、上司や先輩から評価されるとは限りません。日本の会社の場合、むしろ上司や先輩に人柄を評価される・気に入られることこそ出世の第一条件かもしれません。
多少、仕事が出来なくても、上司にそれ以外の面で評価されていた方が、円滑に仕事が進むこともあります。
上司に仕事以外で評価されていた事例
筆者が以前、勤めていた会社の話です。
仕事上でトラブルやミスが続いたため、休日に何度か上司に誘われたプライベートでの時間に、その件の話をしたことがありました。その時に上司に言われたことがあります。
「仕事上でミスが続いたが、君は休日関係なく自分の誘いにも参加したり、相談して意欲をもって取り組んでいたりする姿勢は評価している。仕事のキャリアがあっても、周囲とコミュニケーションを取らず、付き合いをしない人よりかずっと良い。」
それを聞いて驚きました。
筆者は決して、上司に評価されようと思い行動に起こしたわけではありません。平日は仕事で忙しいので上司とゆっくり話す機会がなったので、休日に飲みながら仕事の話をしたかったからですし、上司の誘いも単純に自分で興味があったから参加していただけでした。
たまたま、筆者の業務外の行動が上司に評価されただけだったのです。
「取り組む姿勢を評価されることに力をいれる」=偽物の自分を演じるわけではない
個人的な意見として学校の先生や会社の上司に取り入るために、打算的に偽物の自分を演じるような行為は大嫌いです。先生の前で内申点を得るために良い子を演じる子供たちが、大人になり会社で同じようなことをすることを想像するとゾッとします。
また、先生や上司の前で、無理して良い子、良い人を演じ続けてしまう人だと、必ず精神が病んできてしまいます。うつ病などになって会社を休業してしまう、辞めてしまう人もたくさんいるのが現実です。
「取り組む姿勢を評価されることに力をいれる」ということは、「相手好みの自分・偽物の自分を演じることに力を入れること」ではありません。単純にアピールがヘタで、本来の自分を知ってもらえていない人・真実とは違う評価をされてしまう人が、「周りに対し自己表現をしっかりと表せるよう、工夫や訓練をして正当な評価をしてもらうこと」です。
ここを履き違えている人が多いと思います。
実力で勝負できる公平な大学受験
しかしながら、評価されるべき「関心・意欲・態度」を意識的に作った場合、それに抵抗がなければ問題ありませんが、その行動自体が自分のポリシーに反する・なにをしても偽物の自分を演じているかのように感じてしまう人もいるでしょう。
もし嫌々無理するくらいなら、実力で勝負することを選んでください。
実力で勝負する、それはつまり、大学受験で勝負することです。
高校入試では中学の内申点が絡むケース多いですが、大学受験は一般入試の場合、高校のランクや成績に関係ない一発勝負です。いくら高校の内申点が良くとも、入試で点数が合格点に達せなかったら不合格になります。
日本の大学入試制度は世界の中でも特異かつ公平という意味では透明度が高いと思います。また、就職試験や会社に入ってからも、決して公平な選別、評価が下されるとは限りません。むしろ多くの人が理不尽さや不平等を感じることだと思います。
だからこそ、高校入試の制度に納得いかない中学生や高校生の人達は、人生で唯一といえる公正な選抜試験である大学受験で頑張ってもらい、最終学歴を少しでも自分の納得いくものにして、社会に出る際の武器にしてもらいたいと思います。
大学受験は、以下が基本的な受験科目のパターンになります。
- 私立文系なら、英語、国語、社会。
- 私立理系なら、英語、数学、理科。
- 国立大学では英語、国語、数学、理科、社会。
そのため、中学校時代の主要5科目の勉強は大学受験の基礎となるので、学校の定期テストではしっかり勉強して良い点数をとっておきましょう。
英語をやっておくと大学受験で逆転しやすい
大学受験では特に文系では英語の配点が一番大きいです。中学生でも英語ができると大学受験が有利になるというのは頭の片隅に置いておいてください。英語は中学からの基礎科目になり、中学の基礎がおろそかだと高校に入ってからつまずくことになります。主要5教科でも英語だけはしっかり勉強してください(理系にいきたいと考えている人は数学も)。
著書「ヒトラー 野望の地図帳」のご紹介
現在「【受験に勝つ】世界史の勉強法シリーズ」とは別に、「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡シリーズ」も連載しています。
ヨーロッパを中心とした戦跡を巡る旅行記で、実際にその場に行ったからこそ感じる当時の名残と現在の日常風景を、独自の視点で描いています。本シリーズは、おかげさまで書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。
読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本なので、web連載とあわせて、ご興味をもっていただけたら嬉しく思います。
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
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