【入学前】入学?浪人?受験後の進路を決める前に考えるべきこと
第一志望の大学、学部がすべてではない
春になると第一志望に合格した人たちの笑顔や体験記が掲載された塾や予備校のポスター、インタビューをよく見かけるようになります。しかし、実際には第二志望以下の大学、学部に入学する人たちも少なくありません。
そのように大学受験で思うように結果が出なかった人たちが、いつの時代もたくさんいます。この傾向は偏差値が上位の大学になるほど多くなります。
早慶なら難関国立大を落ち、もしくは途中で諦めて私立1本にして入学する人たちが一定数います。マーチの各大学には早慶上智落ちがたくさんいますし、同志社や立命館は大阪大学、神戸大学といった地元の国立大学を落ちて入学する人もいます。
しかし、たとえ志望校に落ちた、もしくは第一志望の他学部に落ちて入学した場合でも、多くの学生、卒業生は自分の大学に愛着を持っています。それは、「住めば都」という言葉ではないですが、人間には環境に愛着をもつ習性によるものかもしれません。特に有名私大だとメディアにも取り上げられたり、有名人のOBがたくさんいたりするので、自尊心をくすぐられる人も多いでしょう。
入学してしまえば、第一志望・第二志望だったかは関係ありません。受験に関して学内で変な劣等感を感じることは少ないはずです。大事なのは、大学に入学して人間関係を築いていくのは、落ちた大学ではなく入学した大学の学生だということを意識しましょう。
本当に志望大学に行きたいなら、浪人して挑戦する
しかし、なかには自分の大学を名乗るのを隠したり、第一志望以外の大学に対して魅力が持てなかったりなど、学歴コンプレックスを持つ人もいます。
そのような人は第二志望校以下に入学しても、一生学歴コンプレックスを持って生きていく可能性が高いので、もう一度再受験することを勧めます。
現役生なら浪人、一浪した人なら二浪して、もう一度、勝負を挑みましょう。
新卒での就職という話なら、二浪までなら大きくは響きません。それに高校を卒業したばかりの年代では、1年、2年の差は大きいかもしれませんが、学生生活が終わり世の中に出れば、あらゆる年代の人達と働くことになるので、年齢の差を意識することが少なくなります。
・一浪はともかく、二浪は精神的につらい
・親が浪人を認めてくれないので、予備校代を稼ぐのがつらい
そう言い訳をするのなら、志望校への熱意はそれまでということです。
それなら合格した大学が自分のレベルだったと潔く認めましょう。
浪人については、次に執筆予定の「【コラム】行きたい大学があるなら浪人してでも狙え!」編も参照してみてください。
【入学後】陥りやすい失敗例とおすすめの過ごし方
学歴をカバーするための資格や語学は徒労に終わる可能性大
次に、第二志望以下の大学、学部に入学した場合、まじめな人ほど陥りやすい大学での過ごし方についてお話します。
大学受験でしくじってしまったと感じた人は、大学在学中に独立できる難関資格を取ったり、TOEICなど英語の試験で高スコアを出したりして、しくじった分をカバーするよう励む人が多いです。
元々高校時代からその資格を取りたいと思っていた人や、留学するために英語を勉強したいという人は、そこで積極的に勝負すべきです。
しかし、独立とはいかなくても就職を有利にするために資格を取るという学生も多いと思いますが、就職の新卒採用の場合、社会経験がない学生はポテンシャルが重視されます。またその業界に必要な資格の多くは、就職して実地の経験を積みながらでも取れます。
資格取得は働きながらだと大変な面もありますが、その環境の中で取ることができれば、むしろ上司から評価さるポイントになるでしょう。その時にこそ大学受験で培った勉強経験を発揮させるべきです。
個人的には、就職活動をするまでの大学生活は、勉強、遊びにこだわらずやりたいことをやった方が良いと思います。
資格の勉強は社会に出てからもできますが、学問は大学でしか学べません。
趣味でもいいので、やりたいことをやってみる
大学受験が思い通りにいったか否かに関わらず、大学に入ったら、あまり肩肘張らないで、今の自分が一番やりたいことに集中してみるのはいかがでしょうか。勉強にこだわる必要はありません。
受験が終わった時点でやりたいことがなければ、大学に入ってから決めても良いと思います。入学すれば学内では同級生や先輩、学外ではバイトや年齢、立場を超えた様々な人たちと出会う機会があります。彼らと接して刺激を受けてから行動を始めてみましょう。最初は受け身でもいいです。自分に何が合っているかなんてわからないものです。
また、趣味の世界に思いっきり打ち込んでみるのも良いと思います。たとえば、
・アルバイトと海外放浪を繰り返す人
・学内の制度を利用して、短期や長期で留学する人
・イベント団体を立ち上げてそのまま起業する人
・作家や漫画家などクリエイターを目指す人
など。高校と違い、大学では自己責任によるところが多くなります。その分、様々なことに挑戦でき、そこから可能性を広げていくことができます。
日本の情報は東京に一極集中している
入学した大学が、国公立や有名私大でなくても、東京近郊の大学に4年間通えることは多くのメリットがあります。
日本の企業の多くは首都の東京に本社を置いています。大企業のみならず、若手起業家の多くも東京都内にオフィスを構えており、東京を中心に活動をしています。そのため学生時代のアルバイトや就職先が非常に多いのはいうまでもありませんが、若手起業家など様々な分野で活躍している人達と実際に出会える可能性も高いです。
また、世界への玄関口でもある成田空港や羽田空港へのアクセスが良いのも大きなメリットです。海外へ気軽に行けるだけでなく、空港は海外からの様々な空気を吸収する呼吸器の役割を果たしているため、多種多様な文化や人種が訪れる東京は、まさに価値観のるつぼです。
地の利をうまくいかせて行動できれば、学歴以上のメリットを得る可能性を東京は秘めています。
【就職活動】内定への第一歩は「情報収集」と「新卒」
就職活動では手段や発想を変えて勝負する
新卒の就職の採用は、以前に比べたら学歴よりも人物重視といわれますが、大企業を中心として学歴フィルターは存在します。やはり高学歴の方が絶対に有利です。
たとえば、海外と関わる仕事に就きたいとします。まず思いつくのが商社になります。しかし大手の総合商社の内定をもらうには、トップクラスの国立、私立大学でないと厳しいのが現実です。
もし海外と関わることをしたいのなら、大手の総合商社にこだわらなくてもいいと思います。あえてトップクラスの学生が集まる大手の総合商社は狙わず、中堅の総合商社、専門商社で勝負してみるのも手です。大手の総合商社からこぼれたトップクラスの大学の学生も狙ってきますが、中堅以下の大学でも門徒は開けてきます。
大手総合商社の場合、海外と取引する貿易部門は、関連会社として独立している場合が多く、入社の難易度は親会社よりは下がるので、そこを狙ってみるのも良いかもしれません。
また、商社のビジネスパートナーとして、海外進出している物流会社もあります。物流会社の場合、大手でも大学のランクは幅広く採用する傾向にあります。
業界に関係なく、有名な大手企業にこだわらず、その周辺にある関連会社、業界を調べてみると、優良企業が見つかる可能性が高いです。会社は、日本全国にある大学数よりもはるかに多く、就職活動の時に初めて知ることも少なくありません。
自分が何をしたいか、そしてどんな会社・関連業種があるかを徹底的に調べ、選択肢を広げていくことが内定への第一歩となるでしょう。
就職活動で新卒採用を逃すとトップ大学出身でも門徒が狭くなる現実
就職活動で新卒という資格で活動できるのは1度のみ、ということを大学受験が終わった直後でも頭の隅に入れておいてください。
もし、新卒時を逃すと、留年して改めて新卒として就職活動するか、就職浪人して既卒として就職活動をすることになります。このことは高校の進路指導の先生、塾、予備校の先生があまり教えてくれない事実です。
後者の場合、新卒ではなくなるので、就職の幅が一気に狭くなります。実は有名大学を出ていてもこのパターンで既卒生になるパターンが多いです。
・公務員試験、独立系の資格の勉強をしていて落ちた
・留学、大学院進学をしようと思って、何らかの事情でできなくなった
これは意外と進路に対して意識が高い有名大学の学生もはまりやすい罠です。
既卒になっても色々と抜け道はあるのですが、学校名に関係なく、大学生というのは社会に出る選択肢が非常に恵まれている立場でもあることを覚えておいてください。
そんなことも頭に入れつつ、浪人して再受験するのか、受かった大学で頑張るのか考えてみていただければと思います。
【筆者のすすめ】旅行や短期留学でもいいので大学時代に一度海外に出てみる
「受験に勝つ!世界史シリーズ」では、世界史の勉強方法を中心に書いていますので、読者の方も世界史受験者や経験者が多いと思います。
大学受験で世界史を勉強したなら、ぜひ大学に入ってから休みなどを利用して、海外旅行や、短期でもいいので留学してみることをオススメします。
それはどんな形であれ、若いうちに異文化と接することで少なくとも視野が広くなるきっかけになるからです。大学に入り、行動範囲や交友範囲が広がって刺激を受けたと思いますが、海外に実際に足を運び、本や授業で学んだことを体で学ぶことは、それ以上の刺激となるでしょう。
筆者の学生時代の海外との出会いは、「戦争遺跡ライターになったのは、激動の時代ヨーロッパの歴史を知ってから」編で紹介しています。
もしかしたら、モヤモヤと心の底にある学歴へのコンプレックスなどが吹き飛ぶかもしれません。それくらい、大学生くらいの年齢で異文化に触れるということは、今後の人生に何らかの影響を及ぼすのではないでしょうか。
著書「ヒトラー 野望の地図帳」のご紹介
現在「【受験に勝つ】世界史の勉強法シリーズ」とは別に、「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡シリーズ」も連載しています。
ヨーロッパを中心とした戦跡を巡る旅行記で、実際にその場に行ったからこそ感じる当時の名残と現在の日常風景を、独自の視点で描いています。本シリーズは、おかげさまで書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。
読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本なので、web連載とあわせて、ご興味をもっていただけたら嬉しく思います。
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
価格 :1,400円(税抜)