【第45回】バスクの旅1 ピカソの絵の舞台となったゲルニカの街 前編|トピックスファロー

  • 主婦からプロまでライター募集
2017年2月28日
【第45回】バスクの旅1 ピカソの絵の舞台となったゲルニカの街 前編

スペイン戦争の無差別爆撃の苦悩を描いたピカソの「ゲルニカ」は、マドリードのプラド美術館に展示されています。その絵の舞台となったゲルニカの街は、フランスとの国境にも近い西北部のバスク地方にある小さい街です。

戦争遺跡ライター
ヒロマルのfacebookアイコン
  

どうやって行く?ゲルニカ

ゲルニカへの基点となる街、ビルバオ

ゲルニカへ行く拠点となる街は、バスク地方にある産業の中心の港湾都市、ビルバオとなります。ビルバオには国際空港もあります。日本からの直行便はありませんが、ヨーロッパ各都市を経由して空路でビルバオ入りすることも可能です。首都のマドリッドやバルセロナといった大都市からも列車やバスがたくさん出ているので、スペインの他の都市とセットで周ることもできます。ゲルニカに行く場合は、ビルバオに宿をとって日帰りで行くことをオススメします。

【1】 ゲルニカの旧市街
ビルバオの旧市街
【2】アバンド駅と旧市街の間に架かる橋の風景
アバンド駅と旧市街の間に架かる橋の風景

バスと鉄道で行けるゲルニカ

ビルバオからゲルニカへの行き方は、バスと鉄道の2パターンがあります。

バス
スペイン国鉄(RENFE)のアバンド(ABANDO)駅脇のバス停から1時間に数本の割合で出ています(所要45分、2.5ユーロ)

鉄道
バスク鉄道(EUSK TRAIN)のアチューリ(ATXURI)駅から1時間に1本の割合で出ています(所要50分、3.1ユーロ)

注意:アチューリ駅はアバンド駅脇のビルバオ川を渡り、右手の道を川沿いに10分ほど歩いた場所にあります。

【3】アチューリ駅の駅舎
アチューリ駅の駅舎
【4】アチューリ駅のホームに入線するバスク鉄道
アチューリ駅のホームに入線するバスク鉄道

バス、鉄道共にビルバオからのアクセスは良いです。所要時間、値段にそれほど差はないので、片道ずつバスと鉄道にして違う車窓楽しむのも良いかもしれません。

バスはゲルニカ駅のすぐ隣に着きます。

【5】バスからの風景
バスからの風景
【6】列車からの風景
列車からの風景

1930年代のスペイン戦争とは?

第1次世界大戦以前のスペイン

ヨーロッパ中を惨禍に巻き込んだ第1次世界大戦の時は、中立を宣言。

そのおかげで当時の日本と同様に、戦時中は特需景気に沸き産業が活気づきました。しかし、戦争が終わると特需は終わり、社会不安が広がります。

1931年には王政が倒れ、スペイン共和国になります。

当時、ドイツ、イタリアではファシズムが吹き荒れ、ロシア革命によって共産主義運動も盛んに行われました。スペインはその国際情勢を受けて、国内での対立が激化します。
1936年、総選挙で共産主義、自由主義などの連立政党からなる人民戦線派が勝利。

その結果、それを不服とした軍人、国家主義者を中心としたファシズム、右翼的要素が強い反政府組織がクーデターを起こしたのです。反政府組織の中心人物は軍人のフランシスコ・フランコ将軍でした。

1936年7月から1939年4月までのスペイン国内の内戦は「スペイン戦争」、「スペイン市民戦争」、「スペイン内乱」などと呼ばれることになります。

【7】1937年4月のゲルニカ爆撃を伝える英字新聞
1937年4月のゲルニカ爆撃を伝える英字新聞

スペイン戦争は第2次世界大戦の前哨戦

スペイン戦争は、スペイン国内だけではなく世界各国で注目されます。

各国は自分達が置かれた状況に応じて、共和国政府側、反政府組織側、それぞれの側を支援します。共和国政府側には国際旅団からなる義勇兵も援軍に駆けつけました。

その構図はスペイン戦争終結、半年後の1939年9月に始まる第2次世界大戦と同じでした。つまり、スペイン戦争は第2次世界大戦の前哨戦だったのです。

各国のスペイン戦争に対する反応

政府側(共和国・人民戦線)・・・ソ連、国際旅団、メキシコ、フランス
反政府側(軍人、国家主義)・・・ドイツ、イタリア、ポルトガル
不干渉・・・アメリカ、イギリス、

主な各国の意図

・ソ連(政府側)
第1次世界大戦中に世界初の共産主義国家となり、南ヨーロッパの国家にも共産主義を波及させたかった。

・フランス(政府側)
当時、スペインと同じように人民戦線内閣が成立、フランスの人民戦線内閣は共産主義路線の勢力がやや強かった。

・ドイツ、イタリア(反政府側)
1930年代、ヒトラーやムッソリーニがファシズム政権を誕生させ、スペインにもファシズム政権を誕生させ、連携を深めたかった。
ドイツは、空軍の指揮下にある航空部隊と戦車部隊からなる、少数精鋭の「コンドル軍団」を派遣。そのコンドル集団がゲルニカを爆撃することになる。

・アメリカ、イギリス(不干渉)
共産主義の要素が強い共和国政府側、ファシズム勢力が強い反政府側が内戦によって、共倒れしてくれて、民主的な政権が誕生すれば理想的と考えた。

・国際旅団(政府側)
有志の各国の義勇兵が集まった団体。海外には共和国政府は民主的な政権だと思われていたので、民主化の理想に燃える若者が世界各国からスペインに集まる。ナチスやファシストに嫌気がさしていたドイツやイタリアからも参加する者がいた。

【8】政府側兵士の軍服
政府側兵士の軍服

ファシズムとは?

第2次世界大戦を学ぶ際に、必ず出てくる「ファシズム」という言葉。そのファシズムは全体主義とも言われていますが、学問的な定義が難しいので、簡単に要約したものを紹介します。

ライター、武田友弘氏の著書「ヒトラーの経済政策」(祥伝社)では、次のように述べられています。

「ナチスドイツの政治経済思想を大まかにいえば、資本主義と共産主義の中間のようなものである。基本的には資本主義を採りつつ、国家が関与する部分もあるというものだ。」

つまりは、資本主義と共産主義の良いところ取りです。

ファシズムの定義は簡単ではありませんが、ファシズムという言葉が出てきた時に、上記のことを頭に入れておけば、イメージはしやすくなるのではないでしょうか。

「バスクの旅2 ピカソの絵の舞台となったゲルニカの街 後編」でゲルニカ爆撃、ゲルニカの街を紹介します。

【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
アイコン
ヒロマルのfacebookアイコン
1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

▼ご依頼、ご質問はこちらのメールまたはツイッターから
hiromaru_sakai@yahoo.co.jp
https://mobile.twitter.com/HIRO_warruins