降伏博物館の中の様子
博物館の1階では、一定の時間になると20分ほどのドキュメンタリー映画を見ることができます。
フランス語で流れますが、英語の字幕もあります。
2階は展示室。第二次世界大戦中のフランスを中心にダンケルク撤退、レジスタンス活動、ディエップの戦い、ノルマンディー上陸、バルジの戦いなどが当時の写真や新聞記事や当時の兵士の軍服、軍事品などが展示されています。
特に、アメリカ軍の連合国軍の最高司令官、ドワイト・デビット・アイゼンハワー元帥(後のアメリカ大統領)に関する展示が多いです。
彼は降伏調印に立ち会った人物で、ドイツ国防軍からは、降伏文書調印の権限を与えられた、ドイツ国防軍最高司令部のアルフレート・ヨードル大将が立ち会いました。
2階の展示室の見所は、実際に降伏調印が行われた「地図の部屋」と呼ばれる部屋です。
地図の部屋には、当時の降伏調印が行われたテーブルと椅子が再現されています。また、当時、連合軍の司令官たちが作戦会議に使った地図が部屋中に掲げられていました。現在の部屋の地図は、第二次世界大戦の戦いの跡地や進撃ルートを示す地図となっています。
地図に囲まれたテーブルの手前側の椅子に、ヨードルをはじめドイツ軍の代表団3人が座ります。奥側に連合国の代表団の8人が座り、左から2番目と3番目の間付近に立っていたのがアイゼンハワーでした。ヨードルは手前の真ん中の椅子に座ります。
1945年5月7日、午前1時41分、アイゼンハワーとヨードルが無条件降伏文書に調印して、西部戦線の戦いは終結したのでした。
「地図の部屋」には、勝者である連合国のイギリス、アメリカ、ソ連、フランスの国旗が掲げられています。この4ヶ国が戦後のドイツを統治分割して、戦後、ヨーロッパの秩序を築いていきます。
イントロダクション
降伏博物館
正式名称 :MUSEE DE LA REDDITION
住所 :12rue Franklin Roosevelt – 51100 Reims
入場料 :6.5ユーロ(クレジットカード支払い可能)
開館日時※:10:00~18:00(休館は火曜日、1/1、5/1、11/1、12/25)
公式サイト:http://musees-reims.fr/fr/musees/musee-de-la-reddition/
※開館日時の詳しい内容は、公式サイトで確認してください。
ランスとベルリン。ドイツ軍が降伏調印をした2つの場所
ランスで無条件降伏文書に調印した翌日の5月8日、ドイツ軍はベルリンで東部戦線のソ連軍に降伏する調印を結びます。
ソ連軍への降伏調印場所については、「【第12回】1945年5月8日、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線が終結した場所」編をご参照ください。
戦勝国となった国と敗戦国となった国にある、2つの降伏調印の場所。
一番の大きな違いにランスは博物館入場料を取り、ベルリンの博物館は無料で開放していることです。
さすがにドイツは敗戦国という後ろめたさもあり、入場料を取るわけにはいかないのでしょう。
ベルリンの博物館はランスの博物館より、ソ連色が強く出ている展示になっています。そこに東部戦線では長い間、単独でドイツ軍と戦ってきたソ連軍のプライドが感じられます。
ドイツ国内とはいえ、敗戦国という現実、戦後はソ連の息のかかった旧東ドイツだった歴史経緯もあり、ドイツの意思を挟むことは難しいのです。今でもドイツは敗戦国だと感じてしまうのがベルリンの博物館です。
ランスの博物館では、ポスターやマグカップなどがお土産で売られ、エンターテイメント性もあるつくりになっているところに戦勝国の余裕を感じます。
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【第81回】1945年5月7日、第二次世界大戦の西部戦線が終結した場所-その2
同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化
同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。
歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本です。
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
価格 :1,400円(税抜)