まるでラピュタ?エバンエマールの外部
要塞の上部にあたる外部へは、エバンエマール要塞の入口の左側にある獣道のような登山道を登って行くことになります。
パンフレットの図を参考に、筆者が見たトーチカを順に紹介します。
まず、入口は①になります。
②
山道の途中の支線となっているような右の道を行くと、最初のトーチカに出会います。
75mmのカノン砲台が備えられており、ここではグライダー部隊に爆撃され損傷しながら、南部のオランダとの国境沿いに向けて砲撃し続けていました。エバンエマール要塞の任務には、防衛だけでなく、ドイツ軍の進撃が予想されるミューズ川の橋の破壊を行う役割もありました。
広大な景色が広がる要塞の上部
山道を更に上がると、一気に視界が広がり目の前には広大な大地が広がります。
ここがまさに1940年5月10日早朝、ドイツ軍の9機のグライダー(DFS230)が降下した場所になります。ドイツ軍は部隊を4つに分け、他の3つはベルギー、オランダ国境の橋の確保を担当。残りの1つはヴェンツェル軍曹部隊に要塞攻略の任務が任されました。
ドイツ軍は成形炸薬という爆薬を初めて使用します。それにより、トーチカは貫通され、炎と煙が内側に噴流しトーチカ内の守備兵を殺傷しました。さらに火炎放射器で出入り口を攻撃、着地1時間後には要塞の機能は破壊されてしまいます。
エバンエマール要塞の上部は、一見景色が良く、近所の方が犬を散歩させていたりしますが、道らしい道がほとんと確認できず、虫と草を踏み倒して進むことになるので、歩行が思った以上に困難です。まるでジブリ映画の「天空の城、ラピュタ」のラストシーンを連想させます。
④
真ん中にドーム型の砲台は、360度回転可能で17km先まで射程圏内の120mmキャノン砲になります。この砲台も60mmの厚さの装甲でしたが、50kg分の成形炸薬の餌食となり戦闘力を失います。17kmまで射程圏内を捉えられても、接近する敵には無力だったのでしょう。
③
この監視用のトーチカも50kg分の成形炸薬で破壊され、2人の監視兵、3人の射撃手が戦死します。
⑦
北側に位置する、10km射程圏内の75mmキャノン砲が2台備えられていました。ここも50kg分の成形炸薬が直撃。40mmの厚さの装甲は完全に破壊されませんでしたが、機能不全に陥ってしまいました。
⑧
要塞のトーチカの中で一番景色が良いとされているトーチカになります。トーチカの上に上がることができて景色を眺めることができます。
帰りの下りの山道は、行きの山道以上に途中から道も消えるところもあって、少し危険です。
訪問される際は気を付けてください。
エバンエマール要塞が現代に伝えること
ドイツ軍の地上部隊の工兵は、ベルギー軍の抵抗とミューズ川の橋の破壊もあり、エバンエマール要塞の到着は、翌日の朝になりましたが、要塞内のベルギー軍はそこで降伏します。
ドイツ軍による空挺部隊による奇襲という新戦法は、第二次世界大戦でも、日本軍による1942年のオランダ領のインドネシアでのパレンバン空挺作戦、1944年の連合軍によるノルマンディー上陸作戦などにも採用されていくようになります。
筆者がエバンエマール要塞の屋根と言われる、上部分の広大な大地を見た時、空からの総攻撃には無力だなと思いました。既述の通り、先の大戦で主流の戦い方だった、陸からの攻撃を想定していた防御技術を基本としていたため、戦間期の航空技術の発達した戦いでは、広大な土地を持っていることは、相手に着陸するチャンスを最初から与えてしまっているようなものです。
コロナ渦になって、会社に出勤して仕事をするのが当たり前だったスタイルから、リモートワークが主流になってきました。そのためには紙をペーパーレス化、電子化する必要があります。その変化に適用できないとリモートワークも中々進みません。まだまだ従来の出社中心の業界、会社も多いでしょうが、出勤時間の削減による体力の温存、時間の有効活用、フレキシブルに仕事ができる環境がないと、今後、ビジネス戦線を生き抜いていくのは難しいのではないでしょうか。
従来の固定観念に囚われず、時代を読み、それに適応する行動力、機敏性。
この大切さを現在の残っている、エバンエマール要塞は教えてくれている気がします。
エバンエマール要塞の動画を撮影しました。ぜひ動画もご覧ください。
<【第90回】半日で陥落したベルギーが誇った、エバンエマール要塞-その1
【第90回】半日で陥落したベルギーが誇った、エバンエマール要塞-その2
同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化
同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。
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