【第5回】ナチスの党大会が開催された街、ニュルンベルク-その1|トピックスファロー

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2014年11月20日
【第5回】ナチスの党大会が開催された街、ニュルンベルク-その1

ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡 シリーズNO5
バイエルン州でミュンヘンに次ぐ、2番目の大きさの都市であるニュルンベルグには、時代を忘れないための負の遺産が残っています。

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時代を忘れないための負の遺産が残るニュルンベルク

バイエルン州でミュンヘンに次ぐ、2番目の大きさの都市であるニュルンベルクは、ナチス時代、党大会の開催地となり、集会や軍事パレードが行われました。戦争中は空襲で街の90%が破壊され、戦後は、ナチスの戦争犯罪人を裁くニュルンベルク裁判の開催場所となりました。
ニュルンベルクには、その時代を忘れないための負の遺産が残っています。

中央広場 ~アドルフ・ヒトラーと名付けられた広場~

ニュルンベルクは駅を出ると、中世からの城壁に囲まれている旧市街があります。旧市街は一番奥に位置する古城・カイザーブルグまで歩いても20分ほどの大きさです。
旧市街のメインストリート・ケーニヒ通りを歩き、ペグニッツ川を渡ると、街の中心である中央広場に着きます。

カイザーブルク城からのニュルンベルクの街並みカイザーブルク城からのニュルンベルクの街並み

中央広場には16世紀に作られた仕掛け時計があり、正午になると仕掛け時計から皇帝と選帝侯が登場して動き出します。正午には、仕掛け時計の前にたくさんの観光客で賑わいます。しかし、この中央広場は、ナチス時代には「アドルフ・ヒトラー広場」と呼ばれていました。独裁者は自分の名前を街や道の名前につけたがるものです。が、ヒトラーの名前をつけた場所は、そんなに多くなかったそうです。

旧アドルフ・ヒトラー広場旧アドルフ・ヒトラー広場

ニュルンベルクの街は、戦争中、激しい空襲を受けて廃墟となりました。今ある旧市街の町並み、坂道、教会などは、戦前の姿に忠実に復元されたものです。 ニュルンベルクだけでなく、ミュンヘン、ドレスデン、ハンブルク、ケルン、ブレーメン・・・といった日本人旅行者にもお馴染みのドイツの都市は、本来、戦争中に被害を受けた街です、それを、戦前の町並みに復元させています。

ハンブルクについては、「【第54回】ドイツの港町「ハンブルク」を廃墟にした恐るべき大空襲の痕跡」をご参考ください。

コングスハレ ~未完成に終わった大会議場~

ニュルンベルクでは、ナチスの党大会が1927年の第3回大会から、1938年の10回大会まで開催されました。街の東側には、党大会で使われた建物が残っています。

ニュルンベルク中央駅前からトラムに乗り、終点のドクトゥラムで下車。停留場を降りるとローマのコロッセオをモデルにしたといわれる、馬蹄形の壮大な建物が目の前に現れます。それが、党大会場の基点となった「コングレスハレ」と呼ばれた大会議場に使う予定だった建物です。

コングスハレ 外観コングスハレ 外観

当時、この大会議場は、南側にあるデュッツェントタイヒ湖の北側の、湖畔の一部を埋め立てて建設されました。

その建物の大半は、レンガでつくられていました。本来なら5万人を収容する大会議室で、柱を持たない天井をつける予定でした。ところが、設計の一部しか完成せず、終戦を迎えてしまいます。

コングスハレ内部コングスハレ内部

コングスハレ内部コングスハレ内部

コングスハレの見学客コングスハレの見学客

Sバーンのドクトゥラム停留場の目の前にドキュメントセンターはあり、ドキュメントセンターの左側の道を歩いていくと、右側にコングスハレの内部に続く入口があります。

現在も未完成のままの、このコングレスハレの中には、ナチス時代の歴史を伝えるドキュメントセンターがあります。コングスハレ、ドキュメントセンター共に国内外からの見学客で賑わっています。コングスハレは入場無料。ドキュメントセンターの見学は、有料で英語とドイツ語のオーディオカイドの貸し出しもあります。

ドキュメントセンターの入口ドキュメントセンターの入口

関連動画
ニュルンベルク党大会会場跡からコングスハレの周辺
ニュルンベルク党大会会場跡からコングスハレの周辺(@YouTube)

ツェッぺリンフェルト ~記録映画「意志の勝利」の舞台~

コングスハレの前にあるデュッツェントタイヒ湖の左側に道を歩いていくと、ナチスの軍事パレードや、大集会会場に使われた、ツェッぺリンフェルトの跡地があります。

第6回ナチス党大会からメイン会場となったのが、このツェッぺリンフェルトです。

ツェッぺリンフェルトの跡地、中央部分が壇上でヒトラーが演説したツェッぺリンフェルトの跡地、中央部分が壇上でヒトラーが演説した

当時の党大会当時の党大会

党大会でのヒトラー党大会でのヒトラー

1934年の第6回ナチス党大会は、「意志の大会」と言われています。1936年のベルリンオリンピックの記録映画も撮影した女性映画監督、レニリーフェンシュタールによって、映画『意志の勝利』が撮影されました。
一心不乱に行進する何万人もの親衛隊、突撃隊。総統であるヒトラーが壇上に上がれば、彼ら全員が右手を斜め上にあげて「ハイル・ヒトラー!」と叫び、全ての力がヒトラーに集約された瞬間を表す場面となります。

また、ヒトラーお気に入りの建築家、アルべルト・シュペーアの演出による100基以上のサーチライトによって、数千メートル上空まで照らし出された「光のカテドラル」が、ヒトラーの信憑性をより一層高めてくれました。
当時、ドイツに駐在していた日本の要人達は、この記録映画をみて、ナチスに心酔してしまったと言われています。この第6回大会で壇上のヒトラーは、ナチスは今後、千年続くと宣言します。

翌1935年、ニュルンベルクで行われた党大会は、ユダヤ人から公民権を奪い取った悪名高いニュルンベルク法が可決されます。

ツェッぺリンフェルトの外側ツェッぺリンフェルトの外側

壇上の外側壇上の外側

現在、コングレスハス、ツェッぺリンフェルト周辺は緑豊で、野外公園となっており、市民の憩いの場となっています。夏季になればフェスティバルやライブも行われています。ツェッぺリンフェルト跡は来場者の駐車場として使用されることもあり、入場規制が行われることもあるので、ヒトラーが演説していた壇上まで行けないこともあります。

コングスハレ周辺コングスハレ周辺

ツェッぺリンフェルトの周辺ツェッぺリンフェルトの周辺

ツェッぺリンフェルトの隣にある鉄道の線路。党大会には全国から党員が鉄道で輸送されたツェッぺリンフェルトの隣にある鉄道の線路。党大会には全国から党員が鉄道で輸送された

巨大な負の歴史遺産を残しつつも、その跡地を憩いの場として利用しているのが、ベルリンのオリンピックのように古くても伝統を重んじ、補修して使おうとするドイツ人らしい発想です。

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ヒニュルンベルク党大会会場の壇上に立ってヒトラーを体験してきた!
ヒニュルンベルク党大会会場の壇上に立ってヒトラーを体験してきた!(@YouTube)
ニュルンベルクの党大会会場跡の壇上を下から眺める。ヒトラーの壇上は人気スポット ニュルンベルクの党大会会場跡の壇上を下から眺める。ヒトラーの壇上は人気スポット(@YouTube)
未完成に終わった、ニュルンベルクの党大会会場予定地 コングスハレ 未完成に終わった、ニュルンベルクの党大会会場予定地 コングスハレ(@YouTube)

ニュルンベルクのヒトラーの定宿ニュルンベルクのヒトラーの定宿

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ニュルンベルクのヒトラーの定宿が当時のまま残っている
ニュルンベルクのヒトラーの定宿が当時のまま残っている(@YouTube)

【第5回】ナチスの党大会が開催された街、ニュルンベルク-その1
>【第5回】ナチスの党大会が開催された街、ニュルンベルク-その2

【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第101回~)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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