【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い は、3ページ構成です。
「その1」から順に読んでいただくと、より楽しんでいただけると思います。 >> その1
ナルヴィクの見所は、歴史がわかる2つの博物館
ナルヴィクの街は狭いので、徒歩で周れます。その街の中心に戦争博物館があります。戦争博物館は観光案内所を兼ねていて、カフェも併設されています。
観光案内所も兼ねる戦争博物館
戦争博物館の展示内容は、他のヨーロッパの戦争博物館と第二次世界大戦に至るまでの経緯の説明から始まります。そして、当地のナルヴィクの戦いについての当時の写真や遺留品が展示されています。
ナルヴィクの戦争博物館で特筆するのは、ナチスドイツの占領下でナチスの将校と地元のノルウェー人の交流についても展示されていたことです。
ナチスドイツの支配下になったノルウェーは、ナルヴィクから輸出される鉄鉱石をはじめ、天然資源の供給地としてナチスドイツの戦争経済に貢献することになります。そのおかげでドイツから支払われる対価によってノルウェー経済界では特需が起きました。
また、ノルウェーから民主主義は消えたとはいえ、ヒトラーは北欧のノルウェー人を同じアーリア人種として、占領した国の中でも寛大な占領政策をとります。そのため、ノルウェーに駐在していたドイツ軍の兵士と恋に落ちる女性や仲良くなる人達も一定数いたのです。
このナチスとノルウェーの触れ合いについては、オスロのノルウェー抵抗博物館では触れていません。それは首都であるオスロではノルウェーの国家としてのプライドであるのに対して、ナルヴィクは経済の景気に敏感な産業都市であるゆえの寛容さと、占領されていたとはいえ、初めてヒトラーに黒星をつけた戦いの街としての余裕さがあるのかもしれません。
ノルウェー抵抗博物館については、「【第59回】北欧戦跡の旅3:ヒトラーに屈しなかったノルウェー初代国王」編でも紹介しています。
イントロダクション
ナルヴィクの戦争博物館
入場料:100クローネ(日本円で約1,300円ほど)
言 語:英語あり
休館日:無休
その他:クレジットカード使用可
戦争博物館の外になる被爆した広島の石
戦争博物館の前には広島から送られた石があります。
「この石は広島の爆心地から来ました」
「広島を繰り返すな」
「長崎を繰り返すな」
「平和を未来に誓う」
筆者は、ヨーロッパ各地の戦争博物館や記念館を周ってきて、ヨーロッパで広島!原爆!平和!を押す、少し感情的な日本の戦争遺物に出くわすと違和感を感じます。
ヨーロッパの戦争博物館は、戦勝国、敗戦国共に「PEACE」「NO WAR」という文字は少ないように感じます。それよりも客観的な事実を淡々と語っていたり、訪問者に答えを簡単に与えるのはではなく、問いを投げかけて考えさせることが多いです。
世界の人々にとって第二次世界大戦、日本人にとってアジア太平洋戦争、今生きてる世代には永遠の歴史テーマなのですから、あらゆる角度からこの時代を考えてほしいなと思います。
ナルヴィクの戦争博物館の説明文にも以下の文言がありました。
Yor are challenged to ask quetions, think for yourself, without clear and final answers.
There is war; why,how and what can you do about it?
それでもヨーロッパ各地の戦争博物館や記念館で、広島や長崎のことを少し触れていたり、道の名前が「HIROSHIMA」だったり、日本の原爆の被爆ついてはヨーロッパ各国の人たちが想っていてくれるのもまた事実です。
参考記事:「ベルリンに残るナチス時代の日本の面影を追いかける旅」編
キールナ~ナルヴィクの鉄道の歴史がわかる北方博物館
ナルヴィクの街の東側には、キールナからナルヴィクへ鉄鉱石を運ぶ鉄道の歴史がわかる北方博物館があります。
1両の列車になっている部屋ではオーフォート鉄道の開業当時のビデオを見ることができます。このビデオは開業100周年を記念して2002年に制作されたものです。鉄道建設に携わった当時の労働者や開業当時のオーフォート鉄道の映像が流れます。
開業当時はスウェーデンとの同君連合時代(ノルウェーは1905年にスウェーデンから独立)で、ナルヴィクはスウェーデン領でした。ストックホルムからナルヴィクまでは全長約1600km、そのうちノルウェー領の路線は40kmほどであり、鉄道はスウェーデン国鉄が運行、鉄鉱石の採掘会社は当時から発掘権を握るスウェーデンの国営会社LKAB。ですから、現在でもナルヴィクにいると、ノルウェーというよりはスウェーデンにいる感覚になります。
イントロダクション
北方博物館
住 所:Administrasjpnsveien3
入場料:65クローネ(日本円で約840円)
言 語:英語あり
休館日:冬季の土日は閉館
【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い は、3ページ構成です。
「その1」から順に読んでいただくと、より楽しんでいただけると思います。
<<【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その1
<【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その2
【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その3
同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化
同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。
歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本です。
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
価格 :1,512円(税込)