【第77回】パリのユダヤ人強制連行と迫害の歴史。その痕跡を追う-その3|トピックスファロー

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2019年5月22日
【第77回】パリのユダヤ人強制連行と迫害の歴史。その痕跡を追う-その3

ユダヤ人強制連行に関わっていた、ヴィシーフランス政府。「その3」では「その2」に引き続き、当時ユダヤ人を隔離したといわれるパリの郊外のドランシー強制収容所を紹介します。

戦争遺跡ライター
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ドランシー強制収容所に収容された家族が押し寄せたホテル

ドランシー強制収容所の建物がある通りを挟んで、1階はレストランになっているホテルがあります(Le Vauvray ル・ブブレ)。

収容所があった当時もホテルで、最上階の部屋には、収容所にいる家族を一目見ようと押しかけてきました。収容者の顔が判別できる距離だったそうです。その多くは家族と再会することはできませんでした。

強制収容所の前にあるホテル強制収容所の前にあるホテル。当時と外観は変わっていない

さすがに当時の収容者の家族のように泊まるわけにはいきませんでしたが、1階のレストランには入ってみました。店内はレストランというよりはバーやカフェ風で、地元の人達が飲みにやってくる感じです。スタッフも気さくで、かつて家族と最後の別れをした悲しい歴史は店内から想像ができません。

店内の様子店内。月曜の午前中はさすがに客が少なかった

貨車とモニュメントをみながらカプチーノ貨車とモニュメントをみながらカプチーノ

ドランシー強制収容所の建物はアパート、当時のホテルの建物で現在でも営業中なのからもわかるように、負の遺産でも利用できるものは利用するという合理的な発想がヨーロッパ全体にはあります。

見学用の博物館として保存されているアウシュビッツ強制収容所などとは違い、現在でも住人がいる強制収容所だった建物。その生活感がある風景が、見学、観光用として一般公開されている博物館よりも、当時を連想させてくれるような気がします。

ドランシー強制収容所の中庭ドランシー強制収容所の中庭。住民憩いの場となっている。

ドランシー強制収容所の記念館

収容者の家族が訪れたホテルの隣にある近代的なビルは、ドランシー強制収容所の記念館となっています。

記念館は、訪問者に空港のように金属探知機で荷物、身体検査をするという厳重ぶりで、中に入ると、他の博物館のように受付のホールがあり、パンフレットや書籍を販売しています。

右側の建物がドランシー強制収容所の記念館右側の建物がドランシー強制収容所の記念館

受付のホール受付のホール

2階はドキュメントセンターとなっていて、第二次世界大戦に関する書籍や雑誌を閲覧できたり、パソコンで学習することができます。

3階は展示室となっていて、収容された人たちの証言VTRや収容者の所持品、収容所の歴史を展示文や当時の写真で紹介しています(英語、フランス語)。

ドランシー強制収容所の模型ドランシー強制収容所の模型

Jews arrived in Drancy Camps;they had been handed over by the French authorities.

※Jews(ユダヤ人)

これは3階の展示室にあった一文です。

この一文からもわかるように、現在のフランスでは、当時のフランス政府がユダヤ人を検挙した責任を認めています。歴代大統領では1995年、シラク大統領が初めて公式の責任を認める発言をしました。

ドイツ占領下という特殊事情もあり、責任の所在の議論はフランス内外で絶えないですが、展示文の通り、フランス政府の手によって、ユダヤ人を検挙、移送した事実は変わりません。

3階から見たドランシー強制収容所後の眺め3階から見たドランシー強制収容所後の眺め

イントロダクション
ドランシー強制収容所の記念館
正式名称:Memorial de la Sshoa, Drancy
開館時間:金曜日と土曜日以外の10時から16時まで
入場料 :無料
公式サイト:www.memorialdelashoah.org

※祝日などにはクローズすることもあるので、休館日の詳しい情報は公式サイトで確認してください。

ドランシーの隣街にあるヒトラーも使ったル・ブルジェ空港

余談ですが、ドランシー駅の隣駅のル・ブルジェ(Le Bourget)はかつてフランスの国際空港だったル・ブルジェ空港の最寄り駅です。

ル・ブルジェ空港ル・ブルジェ空港

1970年代にシャルル・ド・ゴール空港が完成するまで、戦前からのフランスの空の玄関口でした。ヒトラーもパリ見物の際は、ル・ブルジェ空港を使いました。

ヒトラーのパリ見学は、「【第6回】ヒトラーが巡ったパリ観光ルートを、再現してみる」編をご参照ください。

現在はプライベート専用機専用の空港になっていて、航空博物館も併設されています。

ル・ブルジェ空港は、ル・ブルジェ駅から153番のバスで15分ほどです。バス停は駅から少し離れていて、駅から伸びる道を真っすぐ歩き、左に曲がると大通りの交差点があります。その付近がバス停になります。ル・ブルジェ空港の最寄のバス停は、「Musee de l’air et de I’espase」になります。

ちなみにドランシー強制収容所に行くバスは、駅前の143番のバス停から出ています。

ル・ブルジェ駅前にあるユダヤ人の強制連行の碑ル・ブルジェ駅前にあるユダヤ人の強制連行の碑

【第77回】パリのユダヤ人強制連行と迫害の歴史。その痕跡を追う は、3ページ構成です。
「その1」から順に読んでいただくと、より楽しんでいただけると思います。


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同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化

同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。

歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本です。

ヒトラー 野望の地図帳

「ヒトラー 野望の地図帳」
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社     
価格 :1,512円(税込) 

【連載ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

▼ご依頼、ご質問はこちらのメールまたはツイッターから
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