プレミュンヘン一揆?ヒトラーが進駐したコーブルク
1919年の結成以来、ヒトラー率いるナチスは、第一次世界大戦で混乱していたドイツ社会において、右翼的な国家社会主義を掲げてバイエルン州において、飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を拡大していきました。
1922年、イタリアではベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党の黒シャツ隊がローマ進軍の真っ只中でした。ナチスが標榜する国家社会主義と類似点が多いファシスト党、イデオロギーのために武力と行動で示している姿に、ヒトラーは刺激されます。
ヒトラーは力の誇示を行う決意をします。そして、バイエルン州北部のコーブルクに目を付けました。ヒトラーの国家社会主義と相反する社会主義者、共産主義者が優勢だったコーブルクに、自身も乗り込む決意をします。
1922年10月14日、コーブルクの右翼団体による「ドイツの日」の祝典に招待されていたヒトラーは、特別列車を仕立てて、600人以上の党員、突撃隊を連れてミュンヘンからコーブルクに向かったのでした。お供した側近には、1年後のミュンヘン一揆で運命を共にするメンバーも多数参加していました。
プレミュンヘン一揆ともいえる、ヒトラーのコーブルク進駐。その現場を追ってみたいと思います。
どこにある?コーブルク
ドイツのコーブルクと聞いて、その名前を知っている日本人はほとんどいないと思います。
コーブルクはバイエルン州の最北にある街で、戦後の東西冷戦時代には、西ドイツ側の東ドイツとの国境となっていました。
コーブルクの歴史は古く、歴史の資料上に初めて現れたのは11世紀と言われ、16世紀後半から17世紀前半にかけては、ザクセン=コーブルク公国の首都となります。街の中心部にあるエーレンブルク城は、ザクセン=コーブルク公の居城でした。第一次世界大戦の廃線で君主制が終わると、国民投票でバイエルン州に編入されました。
現在、コーブルクは人口4万人ほどですが、ドイツ新幹線ICEも停車します。ニュルンベルクからは列車で1時間半ほど、「ヒトラーとゲッベルスの対決!バンベルク会議」で紹介したバンベルクからは1時間弱です。筆者もニュルンベルクからバンベルク、コーブルクと一緒に取材しました。
コーブルク進駐の時、ヒトラーの列車もニュルンベルクで停車して、そこからも多くのと党員が乗り込んできました。
1922年10月14日、コーブルク到着
①コーブルク駅に降り立つ
ヒトラー一行がコーブルク駅に到着した時、党員は800人ほどまで膨れ上がっていました。鉤十字の赤い旗の波と引きつれてきたブラスバンド隊の演奏と共に、ヒトラー達は街の中心部まで行進を始めます。ヒトラーはソフト帽、トレンチコート、長靴という姿でした。
彼らは警察に先導されて、道の両端に詰め寄ってきた、社会主義者たちに罵声を浴びせられながら進んでいきました。
関連動画 |
▼コーブルク駅 ヒトラーから名誉市民を与えられた街、コーブルク① 1922年10月14日、ヒトラー一向、駅に降り立つ(@YouTube) |
②街の中心部へ行進開始
そのルートを紹介します。
駅前は駅から真っすぐ進む道と、左右に道(ロッサウ通り)が延びています。バス停が見える右側に進むと、すぐ最初の左側に曲がる角に出くわします。その道(モーレン通り)を進み、イッツ川に架かる橋を超えて少し歩き、2つ目の交差点に出くわします。
③街の中心部、ホーフブロイハウスで演説
駅から徒歩で10分弱、その角にドイツで全国展開しているデパート「GALERIA Kaufhof」があります。ここは当時、酒場ホーフブロイハウスがあり、そこでヒトラーは3,000人の前で演説します。
ミュンヘンでもヒトラーの演説でも度々使われた同じ名前の酒場「ホーフブロイハウス」がありますが、コーブルクにもあったのです(ミュンヘンのホーフブロイハウスは現在も営業しています)。
周辺はコーブルクの旧市街とも少し離れていて、周囲はレストランや売店が目立ちコーブルク市民の生活場のような感じがします。
ミュンヘンのホーフブロイハウスについては、「【第66回】ミュンヘンでヒトラーの面影を追う旅3 ~ヒトラーの躍進編~」をご参照ください。
関連動画 |
▼デパート「GALERIA Kaufhof」 ヒトラーに名誉勲章を与えられた街、コーブルク② 1922年10月14日、駅から行進して中心部で演説したホーフブロイハウスは現在デパート。(@YouTube) |
筆者もヒトラーが演説したホーフブロイハウスがあった跡のデパート「GALERIA Kaufhof」の前にある中華料理屋で、ヨーロッパに来たら必ず食べるチャーハンを頂きました。大都市の中華料理屋より、地方都市の方が安く食べることができます。
ヒトラー一行はコーブルクの中心部を離れた場所で宿泊するため、再び群衆の中を通り抜けていきました。
【第93回】ヒトラーに初めて栄誉勲章を与えられた街、コーブルク-その1
>【第93回】ヒトラーに初めて栄誉勲章を与えられた街、コーブルク-その2