【第62回】神奈川県に存在するナチスドイツの史跡 ~横浜編~|トピックスファロー

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2018年11月16日
【第62回】神奈川県に存在するナチスドイツの史跡 ~横浜編~

ヨーロッパを中心とした戦争遺跡を紹介していますが、実は日本にもナチスドイツと関わる史跡があります。場所は神奈川県の横浜と箱根。第二次世界大戦中、横浜でドイツ軍の戦艦が大爆発した事件があり、帰国できなくなったドイツ海軍の兵士達は終戦まで箱根で暮らします。今回は【横浜】を中心に紹介します。

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闇に葬られた横浜港ドイツ軍艦爆発事件とは?

第二次世界大戦中の1942年11月30日、横浜港で突如大爆発が起こりました。重油を運ぶ高速タンカーであるドイツ海軍の軍艦「ウッカーマルク号」が引火して大爆発したのです。さらに、近辺に停泊していた*仮装巡洋艦「トール号」など4隻も巻き込まれ、失われました。この爆発で、ドイツ海軍の水兵や日本人などの労働者、合わせて102名が犠牲となります。

*仮装巡洋艦・・・中立国の商船を偽装して敵国を襲っていたドイツの軍艦の総称

この軍艦の喪失は、日独両国にとって痛手だったと思われます。
ウッカーマルク号、トール号は共に軍艦でありながら、同盟国である日本とドイツの物資を、お互いの国に運ぶための役目も担っていました。さらに当時は、世界最強といわれたイギリス海軍が大半のシーレーンを掌握していた時期。多くの潜水艦が犠牲になる中、無事に日本に寄港できた軍艦はとても貴重だったのです。

現在の横浜港▲現在の横浜港

ドイツ海軍の本拠地、ドイツのキール港▲ドイツ海軍の本拠地、ドイツのキール港

現在でも爆発の原因がわからない

この事件は戦時中ということもあり、当時、地元住民には情報統制が敷かれて、事件に関しては一切、国からの説明、報道などはありませんでした。そのため戦後、この事件は明るみになることはありませんでした。しかし、横浜税関に事件のフィルムが残されており、平成になってから神奈川新聞の取材で事件が明るみになります。

現場はJR桜木町駅からも徒歩15分ほどの場所にあり、山手や野毛山の住人にも爆発音は聞こえたそうです。そのため、地元住人の記憶の隅には残っており、神奈川新聞が取材した時も彼らの証言は貴重な資料になりました。

しかし、事件が明るみになったものの、原因は敵国の工作員の破壊工作、作業員の不始末などの説があり、いまだに事故と事件のどちらなのか謎に包まれたままです。

爆発事件があった横浜の新港ふ頭

爆破事件の現場は、現在の横浜の新港ふ頭8号バースになります。

「トール号殉難の地」という碑が建てられているようですが、2018年11月現在、8号バース、隣の9号バースは、「YOKOHAMA HAMMERHEAD PROJECT(ヨコハマ ハンマーヘッド プロジェクト)」というリニューアルの工事中で立ち入り禁止となっています。
とはいえ、工事がなくても港湾地区は一般の人の立ち入りができないので、「トール号殉難の地」の碑を見学することは難しかったかもしれません。

地図左のクリーム色の空白部分が新港ふ頭8号バース、右下が桜木町駅方面▲地図左のクリーム色の空白部分が新港ふ頭8号バース、右下が桜木町駅方面

当時の爆発を知る「ハンマーヘッドクレーン」と、新港地区のリニューアル工事

ヨコハマ ハンマーヘッド プロジェクトは、大型客船ターミナルの開港を核に商業施設、ホテルを着工する計画で、2019年に竣工予定となっています。

横浜の新港地区は、現在、赤レンガ倉庫やワールドポーターズなどの商業施設で賑わっていますが、横浜港初の近代的なふ頭として明治時代から大正時代にかけて建設されました。

ふ頭の先に灰色のクレーンが見えます。
これが「ハンマーヘッドクレーン」で、ヨコハマ ハンマーヘッド プロジェクトの名前の由来となっています。

桜木町駅から汽車道を通っていく▲桜木町駅から汽車道を通っていく

真ん中に見えるのがハンマーヘッドクレーン▲真ん中に見えるのがハンマーヘッドクレーン

第一次世界大戦が始まった1914年に設置され、港湾荷役専用クレーンとして活躍しました。このおかげで、貨物船が着岸してから貨物を効率よく扱うことができるようになり、横浜港の発展に貢献。関東大震災でも倒壊せず、第二次世界大戦中の空襲でも破壊されず、横浜の復興にも携わってきました。ウッカーマルク号の大爆発もすぐ隣で見ていた歴史の証人でもあります。

70年代からは貨物船での輸送はコンテナ化が進みます。横浜の港湾機能の中心は、大黒や本牧ふ頭に移り、クレーンはガントリークレーンが中心となりました。横浜のハンマーヘッドクレーンは現在使われていませんが、歴史遺構として残っています。

ヨコハマ ハンマーヘッド プロジェクトでは、「ハンマーヘッドパーク」として、ハンマーヘッドクレーンを残して、新旧横浜のシンボルとして、市民の憩い場としても活用するそうです。
たくさんの人で賑わうと思いますが、ぜひ、「トール号殉難の地」の碑も現場付近にひっそりと設置して一般公開されてほしいと思います。

新港内には、JICAの海外移住資料館、戦前まで海外への玄関口となっていた横浜港駅跡、新港から少し足を伸ばせば、日本の海運業を支えてきた日本郵船の歴史博物館もありますので、港町横浜の歴史散策を楽しめるスポットです。

左は横浜港駅跡、右は赤レンガ倉庫▲左は横浜港駅跡、右は赤レンガ倉庫

JICAの海外移住資料館
https://www.jica.go.jp/jomm/
日本郵船歴史博物館
https://www.nyk.com/rekishi/

ドイツ兵のその後

負傷したドイツ軍の水兵達は、横浜警友病院(現けいゆう病、みなとみらい地区)へ運ばれます、一部兵士の応急処置は山下公園の前にあるホテル・ニューグランド(現在も営業中)でも行われました。

右に見えるのがホテル。ニューグランド、奥の山が山手地区になる▲右に見えるのがホテル。ニューグランド、奥の山が山手地区になる

当時は230世帯ものドイツ人家庭が山手地区にあったので、負傷しなかった兵士はそこのドイツ人家庭に引き取られました。
そして、その後(事件から5ヶ月後の)1943年4月、ドイツ兵は箱根の温泉宿に移送されます。

次回はその箱根へ、足を運びます。
→ 「【第63回】神奈川県に存在するナチスドイツの史跡 ~箱根編~」へ

同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化

同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。

歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本です。

ヒトラー 野望の地図帳

ヒトラー 野望の地図帳
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社     
価格 :1,400円(税抜) 

【連載ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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