ヒトラーに心酔していたイギリス人女性、ユニティ・ミッドフォード
1939年9月1日、ドイツ軍がポーランドへ侵攻開始、9月3日、イギリスとフランスはドイツへ宣戦布告をします。
その時、ミュンヘンの街中で、自殺未遂をした数奇な運命を巡ったイギリス人女性がいました。その名前は、ユニティ・ミッドフォード。彼女について紹介します。
ヒトラーとの出会い
1914年、イギリスのロンドンで生まれたユニティは、姉がイギリスのナチス党員と付き合っていたこともあり、ヒトラーに心酔していきます。20歳の時、ミュンヘンの外国語学校に入学。その目的はヒトラーと会うためでした。
ユニティはヒトラーがミュンヘンにいつ滞在するのか、よく行く劇場や店などを調べました。ナチスとの本部だった褐色の家(現在、NS文書センター)まで押し掛けたくらい、ヒトラーへ傾倒していました。
そして、ヒトラーがイタリアレストラン「オステリア」という店に、頻繁に訪れていることを知ります。ユニティはオステリアの常連客となり、毎日のように通いました。そしてついに、ヒトラーと会うことができたのです。
その後、ヒトラーはユニティをイギリスとのコネクションに利用しようとします。彼女は公の行事に招待され、様々な特権も与えられました。ナチスに心酔するイギリス人は、格好のプロバガンダにもなったのです。
現在の様子:ヒトラーを待ち構えていたイタリアレストラン
ユニティがヒトラーと出会った、イタリアレストラン「オステリア」は現在でも営業中です。お店は、ホフマンの写真館やフェルキッシャー・ベオバハターの発行所があるシェリング通りにあります。
シェリング通りのホフマンの写真館やフェルキッシャー・ベオバハターの発行所は、「ミュンヘンでヒトラーの面影を追う旅6 ~愛人エヴァ編~」をご参照ください。
ホフマンの写真館やフェルキッシャー・ベオバハターの発行所から、ミュンヘン大学方面を背にして、2つ先の交差点を渡る前の右側の角にあります。
1890年創業と歴史が古いレストランで、ヒトラーは店の奥の席に座ることが多かったようです。ユニティ以外にもエヴァやゲリなどもよく連れてきて、彼女たちとも食事をしていました。
筆者はオステリアの前を何度も通ったのですが、店が閉まっている時間だったので、残念ながら食事をすることはできませんでした。
住所:
ShellingStraße
イタリアレストランのオステリアの公式サイト
http://osteria.de/
開戦と同時にミュンヘンの英国庭園で自殺未遂
イギリスがドイツに宣戦布告をした1939年9月3日、自分が英独和平の懸け橋となると信じていたユニティは、ミュンヘンの英国庭園でピストルで頭を打ち抜きます。幸いにも一命をとりとめましたが、その後は意識もほとんどない半身不随として余生を送ることになります。ヒトラーは中立国のスイスを通じて、ユニティをイギリスへ送還するの取り計らいをしました。
ユニティ、ゲリ、エヴァ・・・、ミュンヘンでヒトラーと関わった女性たちは、みんな死に急いでいるかのように感じられます。
現在の様子:ミュンヘンの英国庭園
ユニティが自殺を図った英国庭園は、ミュンヘンの中心部にある広大な英国庭園沿いにあるケーニング通り(KöniginStraße)にあります。
行き方は、オデオン広場とミュンヘン大学の間の大通りであるルートヴィヒ通り(LudwigStraße)から右側に伸びるシェーンフェルト通り(SchönfeldStraße)をそのまままっすぐ進むと英国庭園沿いのケーニギン通りに突き当たります。
ケーニング通りを左側に少し進んだ銀行の建物(KöniginStraße 15)があり、その目の前の道を挟んだ場所でベンチに腰を下ろしピストル自殺を図ったのでした。
住所:
KöniginStraße 15
【本記事における参考文献】
ヒトラーをめぐる女たち(TBSブリタニカ)
著:エーリヒ・シャーケ
ヒトラーの流れをつかむためのマンガ本「劇画ヒットラー」
ヒトラーが初めてドイツと出会ったミュンヘンは、ヒトラーがナチスと出会った街でもあります。ミュンヘン一揆の失敗という痛手、その後の政治の停滞期に女性たちと楽しいひと時を過ごしました。
ヒトラーがドイツの政権を取り、活動の舞台を首都のベルリンにしてからも、長いナイフの夜事件やミュンヘン会談など政治の舞台となったミュンヘン。
第二次世界大戦前までのヒトラーを語る上で絶対に外せない街がミュンヘンなのです。
ミュンヘンでヒトラーの面影を追う旅シリーズの記事でも何度か紹介した、「劇画ヒットラー」(ちくま文庫)は、ヒトラーを学ぶ前の流れをつかむ本としてオススメです。
作者は本人も太平洋戦争に従軍して戦記物のマンガも書いている、水木しげる先生です。
その水木先生がヒトラーの生涯に迫って描いたのが「劇画ヒットラー」です。
ヒトラーやその仲間が水木先生による独特のタッチでコミカルに描かれているので、印象に残りやすいと思います。独裁者ヒトラーはいかにして生まれたか、ということに焦点を置いているので、第二次世界大戦前のヒトラーが中心になっています。
ミュンヘンの街角もたくさん登場しています。特にミュンヘン一揆について詳しいです。
「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ、著書「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)やその他、ヒトラー関連の書籍を読む前に、「劇画ヒットラー」を一読すると、イメージをつかみやすくなると思います。著者もヒトラー関連の取材時には欠かせない1冊です。
同シリーズが「ヒトラー 野望の地図帳」として書籍化
同シリーズが書籍化され、各書店の歴史の棚の世界史やドイツ史のコーナーに置かれています。web記事とは違う語り口で執筆していて、読者の方々からは、時代背景が簡潔でわかりやすい、学者とは違うテイストが新鮮、という感想をいただいております。
歴史好きはもちろん、ちょっとマニアックなヨーロッパ旅行をしたい方々の旅のお供になる本です。
著者名:サカイ ヒロマル
出版社:電波社
価格 :1,400円(税抜)