【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その1|トピックスファロー

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2018年8月17日
【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その1

美しいフィヨルドの景色が広がる北欧の北極圏。そんな場所でも第二次世界大戦中、激戦の舞台となりました。ドイツのヒトラーやイギリスの海軍大臣・チャーチルが狙っていた鉄鉱石の積出港であるノルウェーのナルヴィク。現在のナルヴィクの街を巡ります。

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なぜナルヴィクが激戦地となったのか?

鉄鉱石を奪うことがノルウェーの戦いの焦点

1940年4月9日、ノルウェー西海岸の主要な港にドイツ海軍の船団が殺到、雪山で訓練を積んだ精鋭部隊である山岳師団などを次々に陸揚げさせます。

首都のオスロ以外には、トロンハイム、ベルゲン、スタヴァンゲル、クリスチャンサン、ナルヴィクの各港は1日でドイツ軍に制圧されます。その中でも一番、重要な港はナルヴィクでした。

北極圏に位置して一番北にあるナルヴィク港は、冬でも凍結しない港(不凍港)として、スウェーデン産の鉄鉱石がドイツへ輸出されていました。ドイツは鉄鉱石の90%をナルヴィク港からの輸送ルートに頼っていたのです。

ドイツのヒトラーはその鉄鉱石を万全に手に入れるため、イギリスの海軍大臣・チャーチルはそれを妨害しドイツの戦争経済を破綻させるために、2人ともナルヴィクに注目していました。

そして、あっさりと陥落した他の港と違い、ナルヴィクは、ドイツ軍、イギリス軍が何度も奪い合う激戦地となったのでした。

【第59回】北欧戦跡の旅3:ヒトラーに屈しなかったノルウェー初代国王」編でも紹介しています。

ナルヴィク港と街の全景▲ナルヴィク港と街の全景。港街というより美しい山々に囲まれた保養地の雰囲気がある

連戦連勝中のドイツ軍が初めて撤退した戦い

ナルヴィク港に最初に上陸してきたのは、駆逐艦10隻に護衛されたオーストリア出身の兵士で編成されているドイツ軍の第3山岳師団でした。しかし、翌日、海軍力ではドイツ軍に大きく勝るイギリス海軍の駆逐艦隊がナルヴィク港に襲い掛かります。ドイツ海軍は半数の駆逐艦を失い、3日後には再びイギリス軍の艦隊に襲われ全滅してしまいました。

ナルヴィクに上陸したドイツ軍の第3山岳師団は、ナルヴィク港を放棄して郊外の山岳地帯に逃げ込み、救援を待ち続けます。一方、制海権を手に入れ、海軍力に守られたイギリス軍をはじめとする連合軍はナルヴィク郊外に次々と上陸して、ナルヴィク郊外の山岳地帯のドイツ軍に襲い掛かります。

ヒトラーもナルヴィクを手放すことも考えていた時、天候の回復を待って、空軍による爆撃と孤立した第3山岳部隊へは救援物資を投下する作戦が立案されます。この作戦が見事に的中、連合軍は補給線を絶たれ、ノルウェーから撤退を開始します。

ナルヴィクの戦いは、現代の戦争は制海権より制空権が優位であることを裏付けた戦いと言われています。

そして、北欧の戦いに敗れたイギリスはチェンバレン内閣が総辞職、海軍大臣だったチャーチルが首相に就任。一方、ヒトラーは北の次は西に目を向けて、フランスへ向かいます。

戦争博物館で販売されていたパンフレット▲戦争博物館で販売されていたパンフレットにも、初めてナチスが負けた戦いと記されている

主な戦闘はナルヴィク郊外の山岳地帯と近海で行われましたが、ナルヴィクの街には戦争博物館もあります。戦闘の焦点ともなった鉄鉱石を輸出する港街の観点を中心にナルヴィクを紹介します。

戦争に欠かせない鉄鉱石とは?

鉄鉱石とは、鉄の原料となる天然で産出される鉱物です。

その鉄は、戦争をするのに必要な戦車、戦艦や各種武器の製造に必要なものです。

現代の戦史に関する本を読んでいると、鉄鉱石、ニッケル、タングステンなどの化学物資の単語が出てくると思います。これらは戦争に必要な原料で、交戦中、各国は原産地や輸送ルートの確保に焦点を置くことが多いです。ドイツは同盟国だった日本同様、資源に乏しい国なので、海外へ求めるしかなかったのです。

日本の場合、戦争継続に必要な資源を主に東南アジアに求めて南進しました。

鉄鉱石を運ぶ貨車▲鉄鉱石を運ぶ貨車

牽引するディーゼル。LKABはスウェーデンの鉄鉱石発掘会社▲牽引するディーゼル。LKABはスウェーデンの鉄鉱石発掘会社

戦争博物館に入って最初に目につく展示▲戦争博物館に入って最初に目につく展示。ナルヴィクの戦いは鉄鉱石が焦点なのがわかる

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【第60回】北欧戦跡の旅4:ヒトラーが初めて敗れた、ナルヴィクの戦い-その1
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【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)
【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第101回~)

著者:ヒロマル

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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
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▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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