【第23回】20世紀の大英帝国の戦争の歴史がわかるロンドンの軍事博物館|トピックスファロー

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2015年8月18日
【第23回】20世紀の大英帝国の戦争の歴史がわかるロンドンの軍事博物館

19世紀には「世界の工場」、「太陽の沈まない国」と言われ、世界の中心だったイギリス。20世紀には苦戦しながらも2度の世界大戦を勝ち抜きます。首都のロンドンにはそんなイギリスの戦争を伝える博物館がいくつかあります。

戦争遺跡ライター
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2つの世界大戦の展示がある帝国戦争博物館(IMPERIAL WAR MUSEUM)

帝国戦争博物館ロンドンへやってきた旅行者なら必ず訪れる名所に、黄金色に輝くネオンコジック建築の建物、イギリスの国会議事堂(通称ビックベン、2012年からはエリザベスタワーと改称)があります。地下鉄の駅の入口やテムズ川に架かる橋の上から、デジカメやスマートフォンでビックベンを撮影する旅行者で賑わっています。

そのビックベンから歩いて15分ほどの場所に、帝国戦争博物館があります。イギリス国内には、王立の戦争や軍事に関する博物館があり、その多くは無料で入場することができます。その代表的なものが帝国戦争博物館です。
かつて精神病院だった建物を利用して、第2次世界大戦直前の1936年に帝国戦争博物館としてオープンしました。

精神病院だった時代には、徳川幕府が派遣した遣欧使節団に参加していた福沢諭吉も見学に訪れています。 第1次世界大戦から第2次世界大戦を中心に朝鮮戦争、冷戦、フォークランド紛争、湾岸戦争など、現代までのイギリスの軍事史に関するものが展示されている博物館です。

イントロダクション

最寄り駅:地下鉄 Lambeth North駅 (鉄道のターミナル駅Woterloo駅から徒歩10分ほど)
住所:Lambeth RD. SE1 6HZ
入場料:無料
一言:ビックベンやWoterloo駅から、ロンドン散策しながら歩いて行くことをオススメします。

イギリス本土を守り抜いた空軍の戦いを伝える王立空軍博物館(Royal Air Force Museum)

ロンドンの中心部から地下鉄ノーザンラインで40分ほどの場所に王立空軍博物館があります。 地下鉄Northern lineのColindale駅の改札を出ると道があります。その道を左側に10分ほど歩くと空軍博物館に着きます。

入口を入ると博物館の庭があります。ここでは第2次世界大戦中、イギリス本土を守り抜いたイギリスの戦闘機スピットファイヤーが出迎えてくれます。

本館は大きな格納庫にレプリカの飛行機が多数あり、20世紀初頭からのイギリスの航空の歴史が一目で分かります。イギリスの戦闘機のみならず、第2次世界大戦中、イギリス本土を襲い、スピットファイヤーと激戦を繰り広げたドイツの戦闘機、メッサーシュミットも展示してあります。そして別館には、第2次世界大戦中のバトルオブミュージアムがあります。

バトルオブブリテンとは?

バトル_オブ_ブリテン

かつて7つの海を支配していたイギリスも、1940年には英国史上最大の危機を迎えていました。前年の9月にアドルフ・ヒトラーが率いるドイツ軍が、ポーランドを侵攻した後、開戦1年足らずで大国フランスを屈服させます。ほとんどのヨーロッパ大陸の国は、ドイツの軍政下か同盟国となっていました。連戦連勝で楽観したヒトラーは、フランスを軍門に下した直後、ヨーロッパの陸の孤島となったイギリスへ向けて和平を提案します。

しかし、当時、首相に就任したばかりのチャーチルの意志は強固でした。彼はドイツとの徹底抗戦の決意をします。

「たとえ、ヨーロッパの大部分がドイツの手中に落ちても、我々は落胆したり屈服したりしない。最後まで戦う。高まる自信と力を持って、空と海と陸とで戦う」

1940年の夏、ドイツ軍のイギリス大陸上陸作戦の前哨戦と言われるイギリス本土上空での航空戦、「バトル・オブ・ブリテン」が幕を開きます。
当初ドイツ軍は、イギリスの軍需施設、空港、港湾を爆撃していましたが、首都ロンドンを初め、イギリスの各都市にも無差別爆撃を開始します。

ロンドン市内だけで350万戸以上の住居が損害を受けました。しかし、ロンドン市民は、空襲直後の消火活動、ガレキ処理、不発弾の除去作業に積極的に加わりました。戦意が衰えるどころか、「打倒ナチス、打倒ヒトラー」と結束力を強めていくことになります。

ロンドンのビックベンの横には、チャーチル戦時内閣執務室が公開されています。(詳しくは「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡 編」参照

バトル・オブ・ブリテン館

バトル・オブ・ブリテン館へ入ると、子供の疎開の様子や空襲直後の街のジオラマがあります。その後はメイン館と同じように、第2次世界大戦中の戦闘機や爆撃機が展示されています。ロンドン空襲下当時の地下鉄の駅のポスターが展示されています。(写真 駅のポスター1)それらポスターは、戦時下のロンドン市民への警告とも言える内容が多いです。

駅のポスター_01

占領されたオランダやフランスでは避難民でごった返し混乱しました。ドイツ軍が上陸しても必ずイギリス軍が撃退するので、冷静に行動してくれという内容のもの。(写真 駅のポスター2)

駅のポスター 2

当時、イギリス国内にも多くのナチスのスパイがいました。スパイに要注意、口は災いの元と言っているもの。(写真 駅のポスター3)

駅のポスター 3

イギリス国内の男性は兵隊に取られ労働力が不足していました。軍隊や軍需工場への女性の募集広告。(写真 駅のポスター4)

駅のポスター 4

空襲下のロンドンの地下鉄の雰囲気は、「ロンドンの街角にひっそりある第2次世界大戦の面影を訪れてみよう 編」参照

また、バトルオブブリテン館には、戦争末期にドイツが報復兵器として開発した、ロケットミサイルV2号の実物大レプリカの展示もしています。ロンドンへ打ち込まれたV2号は、音速兵器のため、防ぎようなかったと言われています。

イギリスの博物館なのに、敵国ドイツの戦闘機や爆撃機の展示もあることは、戦勝国イギリスの余裕を感じます。
空軍博物館の本館とバトルオブブリテン館には、それぞれカフェ風のレストランが併設されており、子供を連れた家族も楽しめるようになっています。

空軍博物館

空軍博物館の見学客は小さい子供を連れた家族が中心です。その子供達は戦争の悲惨な歴史を学びに来ているというよりは、日本の子供達が鉄道博物館で鉄道を見てはしゃぐような感覚で、戦闘機や爆撃機の展示を楽しんでいます。見学者の意識からも戦勝国の戦争博物館らしさのようなものが感じられます。

イントロダクション

最寄り駅:地下鉄Colindale駅
住所:Grehame Parl Way,London, NW9 5LL
入場料:無料
一言:ロンドン中心部から少し遠いので、半日を費やすと考えておくと良いと思います。

海外の博物館巡りは、英語の説明文を読むよりビジュアルで楽しむ意識を持とう。

ヨーロッパの戦争博物館に限らず海外の博物館を周っていると、主に英文で書かれてある展示文を読むことになります。説明文の英語の文法は高校レベルでも、単語は専門用語が多くて難解に感じられると思います。

例えば、ロンドンの博物館では「BLITZ」という単語をよく目にしました。これを後で調べたら「第2次世界大戦中のイギリス本土への空襲」を表現する俗語でした。

空軍博物館では「RACID」という見慣れない単語が頻繁に使われています。文脈から推測すると「空襲」という意味なのが分かります。多少、英語を読める力があると、博物館見学で思わぬ恩恵を受けることもあります。

BLITZ

イギリスの母国語は英語なので、イギリスの博物館は必ず英語表記があります、しかし、ドイツ、フランスなどの博物館の場合、英語表記すらないところもあります。
仮に日本語で書かれていたとしても、博物館の説明文を読むのは相当時間がかかるものです。

博物館には、オーディオガイドもありますが、日本語のオーディオガイドが置いてある博物館は稀です。海外の博物館の説明文レベルの英文を読めて、英語のオーディオガイドを聞き取れる英語力を持った日本人の旅行者は、実際にはとても少数派だと思います。
なので、博物館では説明文を熟読するよりも、展示物をビジュアルで気軽に楽しむ意識を持ちましょう。

ビジュアルで楽しめるような博物館でなかったら、世界各地から訪問されるような博物館にはなりません。このことは日本の博物館にも言えます。
そして、一番重要なのは、英語を勉強することではなく、事前に本などで予習して知識を付けておくことです。多少でも知識があれば語学が分からなくても理解しやすくなります。

ヨーロッパの博物館は、クリスマスや元旦は閉館していることが多いです。また、不定期に改装中で閉館している日もありますので、事前にホームページなどで確認しておくと良いです。(タイトルの博物館名の英語表記を検索すると、一番上にホームページがでてきます)

【連載ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡

著者:HIRO

戦争遺跡ライター
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ヨーロッパ各地の世界大戦の戦争遺跡を周って取材しています。
だから、戦争遺跡ライターです。
学生時代から、事件、事故現場、戦争跡地を野次馬のように行くダークツーリズムラー。
特にヒトラー、ナチスなど、第2次世界大戦のヨーロッパ戦線に関することが一番好き。
しかし、重いテーマの旅をしているかというと、旅行先では美味しいご当地グルメを堪能して、お酒を飲んでいます。時には道に迷ってテンパったり、ヨーロッパの街並みに感動したりと、見かけはヨーロッパが大好きな普通の旅行者です。

ニコニコ動画
「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズを
ダークリズム・ジャパンのニコニコ動画にも寄稿しています。
http://ch.nicovideo.jp/darktourism