【第81回】1945年5月7日、第二次世界大戦の西部戦線が終結した場所-その1|トピックスファロー

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2019年6月11日
【第81回】1945年5月7日、第二次世界大戦の西部戦線が終結した場所-その1

ドイツ軍がベルリンで無条件降伏する前日、パリから北東140kmにあるランスで、ドイツ軍はまず西部戦線の連合軍に降伏しました。ランスには降伏調印された建物が博物館として残っています。

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パリが解放された「自由フランス」を母体とした共和国政府が発足

1944年6月、連合軍がノルマンディー海岸に上陸。同年8月、パリ解放とナチスドイツに支配されていたフランス全土が、徐々に解放されていきます。それによって、フランス南部に樹立していたヴィシーフランス政権も崩壊。ペタンを始めとした閣僚は、ドイツへ人質として移送されます。

ノルマンディーに上陸した連合軍には、ド・ゴールが率いた「自由フランス」も加わっていました。自由フランスが中心となり、パリ解放直後にフランス共和国臨時政府を発足させ、ドイツとの戦いを続けていきます。

パリが解放されて喜ぶ市民パリが解放されて喜ぶ市民

第二次世界大戦中、ドイツに降伏後のフランスについては、「【第75回】2つの政権に分かれていた第二次世界大戦中のフランス」編をご参照ください。

また、パリ解放後のフランス国内での戦いの一つに、ドイツ国境と近いアルザス地方で、アメリカ軍の日系人部隊とドイツ軍の戦いがあります。「【第17回】米軍日系人部隊VSナチスドイツの戦いがあった街ブリュイエール」編で紹介しているので、こちらも読んでいただけたらと思います。

その後、連合軍もドイツ軍の反撃に苦戦しながらもドイツ本国へ流れ込み、次々とドイツの主要都市を占領することに成功します。そして、1945年4月、首都ベルリンには、東部戦線のソ連軍が侵入して、ヒトラーは自殺。ナチスドイツは崩壊します。ヨーロッパ各地にいたドイツ軍の残存部隊は、次々に降伏していきました。

そして、アメリカ、イギリス、フランスを中心とした西側連合国に正式に降伏することになります。

その場所が、フランスのランス。1945年5月7日のことでした。

そんなランスの降伏調印が結ばれた建物を紹介します。

第二次世界大戦のフランスの英雄ド・ゴール第二次世界大戦のフランスの英雄ド・ゴール

第二次世界大戦の西部戦線が終結したランス

ランスはフランス国王の戴冠式が行われた街

ランスはパリの北東に位置して、パリ東駅からTGV(フランス新幹線)を使えば45分で着きます。

ランスがあるマルヌ県はシャンパーニュ地方と呼ばれて、シャンパンの本場です。ランスにあるノートルダム大聖堂では、歴代のフランス王の戴冠式が行われてきました。14~15世紀の英仏百年戦争で活躍したジャンヌ・ダルクがシャルル7世から戴冠を授かったことでも有名です。

ランスのノートルダム大聖堂ランスのノートルダム大聖堂

シャンパンシャンパン

フランス人の精神的支柱、ノートルダム大聖堂

話は少し脱線しますが、ノートルダム大聖堂について触れたいと思います。筆者が今回のフランス取材で渡仏する数日前、パリのノートルダム大聖堂が消失して、世界的なニュースになりました(2019年4月)。

1944年8月、パリを解放したド・ゴールも、その4ヶ月前にヴィシーからパリを訪問したペタンもノートルダム大聖堂に寄ってから、近くのパリ市庁舎で演説しています。

焼失したパリのノートルダム大聖堂(2019年4月下旬撮影)焼失したパリのノートルダム大聖堂(2019年4月下旬撮影)

パリの市庁舎パリの市庁舎

当時、対立しているはずの2人のエピソードからもわかるように、ノートルダム大聖堂はフランス人にとって特別なものなのです。

「ノートルダム」はイエス・キリストの母、聖母マリアを指します。ノートルダム大聖堂が着工された12世紀は、マリア信仰が広がりを見せていた時期でした。その後、フランス革命でキリスト教を理性に反するものとして迫害対象になります。しかし、フランス人は国民意識を高揚させるシンボルとして復興させたのです。それは現代に続くフランス人の精神的な支柱となっていました。

パリのノートルダム大聖堂は消失してしまいましたが、パリ周辺のランス、シャルトルなどにも歴史的に貴重なノートルダム大聖堂があるので、ぜひ訪れて見てください。

シャルトルの大聖堂はステンドグラスが圧巻シャルトルの大聖堂はステンドグラスが圧巻

降伏調印した部屋が再現されている降伏博物館

そんなランスで、第二次世界大戦の西部戦線の降伏調印が行われたのです。ランスの駅を降りて駅からまっすぐ進めば、ランスの中心部になりますが、降伏調印が行われた建物は駅の裏側になります。

駅を出て左の道を真っすぐ進むと鉄道の線路を渡る陸橋があり、それを渡って最初の左に曲がる道沿いにあります。駅から徒歩で約10分ほどです。

駅方面から陸橋を渡ると右手に見えてくる駅方面から陸橋を渡ると右手に見えてくる

降伏調印が行われた建物がある敷地は、現在は高校になっています。降伏調印が行われた建物は、博物館として公開されています。

現在の降伏調印が行われた建物現在の降伏調印が行われた建物

当時の降伏調印が行われた建物当時の降伏調印が行われた建物

続く「その2」では、博物館の中を紹介します。

【第81回】1945年5月7日、第二次世界大戦の西部戦線が終結した場所-その1
> 【第81回】1945年5月7日、第二次世界大戦の西部戦線が終結した場所-その2

【連載】ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡(第1回~第100回)

著者:ヒロマル

戦争遺跡ライター
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1979年神奈川県生まれ、神奈川県逗葉高校、代々木ゼミナールで1浪、立教大学経済学部卒業。

大学在学中からヨーロッパ、アジアなどを海外放浪してハマってしまい、そのまま新卒で就職せずフリーターをしながら続ける。その後、会社員生活をしながらも休み、転職の合間を利用して海外放浪を続ける。50ヶ国以上訪問。会社の休暇を利用して年に数回、渡欧して取材。

2012年からライター業を会社員との二足のわらじで開始。
2014年からwebメディア(株)フォークラスのTOPICS FAROで2つのシリーズを連載中。

▼もんちゃんねる(You Tube)
https://www.youtube.com/channel/UCN_pzlyTlo4wF7x-NuoHYRA

▼「ヨーロッパで訪れたい世界大戦の戦争遺跡」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/warruins
ヨーロッパ各地を取材し、第二次世界大戦に関する場所を紹介。
軍事用語などは極力省き、中学レベルの社会の知識があれば楽しめる記事にしています。
同シリーズが2017年に書籍化。
「ヒトラー 野望の地図帳」(電波社)から全国書店の世界史コーナーで発売中。

▼「受験に勝つ!世界史の勉強法」シリーズ
https://topicsfaro.com/series/wh
2018年から主に世界史を中心とした文系の勉強方法について執筆。
大学受験だけでなく、大学生や社会人の大人の教養としての世界史の勉強方法にも触れて、
高校生、大学生、社会人とあらゆる世代を対象としています。

世間の文系離れを阻止して、文系の学問の復権に貢献することが、2つの連載の目的です。

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